精神文化で日本再生
−政治家の能力は「哲学」、「信念」、「説得力」−

私は、江戸時代から続く京都室町の繊維問屋で生まれ育ったんです。私が大学(京都大学)のころ、会社の経営がうまく行かず、父親や従業員が歯を食いしばって立て直しに一生懸命でした。その姿を見て、「努力し、がんばっている人たちが報われる」社会づくりに携われる仕事に就きたいと考えました。恩師の勤めもあって、大蔵省に勤めることになった。

渡辺元副総理が政治家人生決めた

入省後は、英国勤務や主計局、国際金融局などで仕事をしましたが、何といっても渡辺美智雄元副総理(当時蔵相)の秘書官としてお仕えしたことが、私のその後の人生を決定付けました。京都一区の衆議院議員であった田中伊三次先生が自民党を離党されていた選挙区事情もあり、渡辺先生に出馬を勧められました。地元の友人・学界・経済界などの強い後押しもあって当選させていただき、今日がありますね。

もちろん、出馬に踏み切った最大の理由は、やはり「公のためにつくす仕事がしたい」という気持ちからでした。私が「政治主導」の必要性を感じたのはこのころから。では、「政治主導」とは一体何かです。まず、その前提として政治家の「能力」が問われます。「能力」とは法律や経済学を知ってるとか、数字に強いなどといった役人に対抗できる知識を持っていることではないと思います。過去・現在の歴史の流れを見据えながら、現在の状況をどう判断し、未来をどう展望していくかという「哲学」、「信念」を持つことだと思います。さらに、官僚が作った政策を政治は判断し、決定しなければならないのですから、その際、有権者に理解してもらうための「説得力」が何よりも大切ですね。「有権者の希望」、「庶民の声」をどう整理し、取捨選択し、説得し、全体の公平、国のバランスを作りあげていくという能力ですよ。

「権力」を背景に政策実現に奮闘

時として、政治家は消費税導入のときのように、国民に嫌なことを強いなければならないときもあります。国民を真摯に説得できる勇気・責任感・話術です。もちろん、政治家は政策だけではいけない、政治の本質は「権力闘争」ですから。だが、「権力」を求めることが最終目標ではなく、得た権力により、自分の目指す「国家像」「政策」の実現にいかに奮闘していくか。つまり「何をやるか」なんですね。

政党や政治家が明確な主張をしないから無党派が出るのではないか。例えば、日本の近代の歴史を見ると、明治維新、大平洋戦争後、そして現在と三つの大きな転換期がありますね。これらの転換期の前には、必ず長く平たんな「繁栄」の時代が存在している。その「繁栄」の時代を享受し過ぎて、国民全体が大切なものを見失ってしまった時に危機が来る。大切なもの・・・例えば、「自助」の精神。もっとわかりやすく言えば、「他人の世話になることへの恥ずかしさ」です。人からお金を恵んでもらうことは恥ずかしいが、他人の税金をあてにして国から何もかも「もらう」ということを当然の権利と考える人が多くなり過ぎた。

万能でない市場経済・自由社会

同時に経済的繁栄の中で「競争拝金主義者」も急増してしまった。一番重要なことは、このような風潮に率先して批判的精神を示すべき社会的エリートが、平たんな繁栄の中で率先して、こうした社会風潮にどっぷり浸ってしまう。このような風潮が度を超すと、社会や経済の活力は低下します。他人への依存が強まり、社会のリーダー層に批判精神の欠如が見られ、国家や社会、家庭へのつながりが薄くなってくる。

戦後日本は、社会主義的資本主義の軌道をたどり、国家の介入・助成は多かった。これを転換して競争社会つまり市場経済の方向に持っていくことは正しい。その際注意すべきことは、市場経済・自由社会は万能ではないということ。規制緩和や自由化ですべてが解決できるという妄想にとらわれてはならないですね。これは、無機質な主張であり、人間を相手にする政策としてはあまりに不十分です。

今こそ、「慣習」「道徳」など日本の精神文化を重視し、市場経済と民主主義の欠点を補いつつ、日本を再生する、正しい保守主義が望まれると思いますね。

伊吹文明

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