トランプ政権が関税引上げに動いています。鉄鋼やアルミニウムに25%、自動車にも25%とか。対米投資を理由に日本は例外扱いを求めていますが、あまり下手に出るのもどうでしょう。2月3日に本欄で指摘した「石破トランプ会談が無事終っても、安全保障や貿易赤字で何を言ってくるか」が、やはり現実になりました。しかし例えば鉄鋼は、日本しか持っていない技術の製品輸出なので、輸入加工している米国業界からいずれ悲鳴が上るでしょう。
関税を始めとするトランプ流の経済政策は、全体の斉合性がないように思います。「政策の途中経過には答えたくない」としたトランプ発言に、株価下落で反応したニューヨーク市場がその証明です。①輸入品価格上昇の結果、米国民は高い輸入品か費用対効果の悪い国内製品を選ばねばなりません。②賃上げで不満を抑えようとすると、企業業績は悪化します。③所得減税を恒久化する公約は、自然増収や関税収入の著増がないと連邦予算赤字は更に増えます。
更にトランプ大統領は「中国や日本は自国通貨安を誘導し、対米輸出を容易にした」とも発言。中国元はともなく、円安の結果輸入品の円表示高(消費者物価高騰)に苦しむ日本は、ドル安円高の為替介入まで実施しているので事実課認なのですが、問題解決の鍵が実はここにありそうです。
固定相場制なら通貨交渉で、スミソニアン合意のようにドル安レートを人為的に設定できますが、現在は市場が為替相場を決める変動相場制です。米国の金利引下げを条件に、日本が現在考えている公定歩合の引き上げを日米協調して行えば、利回り改善の円買いの結果トランプ大統領の希望するドル安・米国の輸出増、関税と同様の輸入減の条件が生じます。これを提案し、関税の例外扱いのディルを日本から仕掛ける気概を石破内閣に持ってほしいものです。
問題は円安の方が輸出に有利、海外からの送金の連結決算の円表示利益が大きくなるとの経営者のぬるま湯マインドでしょうか。10年前は1ドル100円でしたが日本の経常収支は黒字でした。円安は日本人の労働力と技術の150円分を1ドルで買われていることを意味し、円高なら150円分を1ドル50セントで売れるのです。円高なら1ドル分を100円で買え、円安なら150円の支払いです。1ドル100円でも輸出ができるだけの競争力・生産性の回復こそ日本が急がねばならぬことで、円安への安住より公益と活力の視点を取り戻すことを経営者・国民にお願いしたいと思います。