暑い毎日如何お過ごしですか。8月は人生でお世話になった故人や亡き友人等のお参り、父方や母方の墓所への供花が毎年の習慣です。祖先の霊が浄土に戻る道を照らす16日の京都五山の送り火で私の夏は一段落です。私は仏教徒ではありませんが、少し前まではこれが日本の習慣で、民族の生き方・文化だったと思います。今では豊かさと科学の発展で1人でも暮らしていけるので、家・祖先・家族・地域社会の絆が失われ、日本人の協調性、悪く言えば同調圧力はキリスト教的一神教・自己主張の西欧文化に変化しているようです。
この夏読み返したスペインの哲学者オルテガの「大衆の反逆」には改めて考えさせられました。世界(当時のヨーロッパ)で無敵艦隊を誇り、第一の強国であったスペインは英国に敗れ、米スペイン戦争で中南米の権益やフィリピン等の植民地を失います。経済的繁栄が止まり、国民に不満が高まるなかオルテガは述べます。「経済や科学等がもたらした現在を護る努力をしない大衆は、大切なものを失う」と。この国民の不満が共和制を崩壊させ、フランコ将軍の強権ファシズム政権を生む内戦を予言していたかのようです。高度成長後の停滞の世相や日本国民に相通ずるようにも思えます。
オルテガは大衆を批判したのか、大衆におもね支持を得ようとする政治を批判したのか。総選挙前は多くの野党は消費減税の大合唱、それを心配し自民党も巻き込まれた食料品消費税ゼロを検証しましょう。減税は歓迎されますが、大衆に減税の損得を説明できているか。①最終消費者は税を払わずとも、最終段階までの税負担はとりあえずは残るので、本体価格はあまり下がらないのでは。②社会保障財源なので減税分の補填がないと保険料や自己負担は上がるのでは。③万が一にも国債増発で財源を補填すると、長期金利上昇と円安加速で、経済停滞と輸入物価上昇により国民生活は大変なのでは。
大衆がいちばん惑わされるのは、税の自然増収があるとの説明です。税は経済成長により増収となりますが、名目経済成長率はモノの増加と物価上昇の合計です。物価上昇分の増収は歳出面の物価上昇、例えば地方自治体の住民サービスへの交付税・年金・医療・介護・教育・公共事業の単価増に充てられ、消費減税の穴埋めには使えません。モノの増加、即ち実質成長による増収分こそ「強い日本経済」の財源に充てるべきですが、それを新規施策や借金返済に充てた民主政治の指導者を見出すことは稀です。消費減税実施は決断したのですから、その利害損失を国民・大衆に広く伝え、「知らなかった」との反乱を抑えられる国会審議を与野党に期待したいと思います。
週刊いぶき