週刊いぶき

週刊いぶき

さわやかな連休は如何でしたか。あわただしい現実に戻るまでの一呼吸として、連休で感じたことを記します。
久しぶりにテニスコートで、コーチを相手に1時間たっぷり汗をかきました。若い人では球筋がそろわないのとスピードに追いつけないので、最近は専らコーチ相手。気持ちに体がついていかないのは年齢故でしょう。風呂上がりの1杯のビールは運動へのご褒美。若い人だけなく、年金生活や自営業の高齢者の人たちともコートで雑談。「少し働いてもいい」、「人との触れあいが少ないのは淋しい」等々。労働力不足は少子化よりも豊かさに慣れてしまった日本人が、つらい嫌な仕事を避けてきたからでは。元気な時の日本経済を担った、かつての経験者に働き場があってもと思います。私の事務所では昔の秘書さんが週3日元気に仕事をこなしています。
約40年前、初めて衆議院選挙に挑戦したときは荒野に1人放り出された心境でした。世襲や後継指名でない無名の新人を助けて頂いた恩人・仲間とは、今も年1度の同窓会の語らいがあります。だが鬼籍に入られた方も多く、連休中にお訪ねし、花を供え想い出話をします。最近は遺影や仏壇のないマンションのお宅も多くなりました。我が家でも将来は伊吹家や妻の実家の墓所の管理等はどうなるか等と考えさせられます。少子化やライフスタイルの変化が、私達日本人が大切にしてきた家族、家や祖先への気持ちを変化させているのか。
「京に田舎あり」で、連休の1日は友人と一緒に渓流釣りに山奥に行きます。京都嵐山を流れる桂川の源流地域は、かつての集落が廃村になっていたり、高齢者のご夫婦が懸命に自然を護っておられたり。自然環境が変わり、昔のような釣果は望めないのですが、放流して釣らせるものでなく、天然のあまご(やまめ)を苦労して1日で5尾ばかり。何より嬉しいのは、蕗のとう・たらの芽・こしあぶらの山菜が少しずつ手に入ること。更に地元の友人が山椒の花を摘んでおいてくれること。
山菜の天麩羅は熱々を塩で頂くと、冷えた冷醸酒が進みます。貴重な山椒の花は、①鳥肉、豆腐、しいたけ、舞茸を昆布だしで土鍋で煮て、花山椒をひとつかみ入れて頂きます。②スパゲッティはオリーブオイル、醤油で味を整え、花山椒を混ぜ合わせます。我が家の食卓は妻と分担し、吸い物は必ず自分で出汁を整え、インスタントは使いません。食品スーパーのお惣菜を並べる食卓でなく、「金をかけずに手間をかける」節約・手作りです。
さて来週からはご一緒に慌ただしい現実に戻りましょうか。

米・イスラエルとイランの戦闘の先行きが不透明で、原油供給停滞で日本を含む世界経済の混乱や先行き不安が続いています。この事態は第二次世界大戦後の世界秩序の耐用年数が切れ、日本もどのような立ち位置で、将来を護っていくかを問いかけてもいるのです。第二次世界大戦(大東亜戦争)の悲惨な結果への反省から、人類はその原因となった①重商主義的自国第一主義、②軍事力による経済権益・植民地確保、③無差別な人的攻撃等の禁止の為、㋑国連中心の国際秩序、㋺IMF・GATTによる自由貿易体制を設立しました。

二つの体制は内部に矛盾を抱えつつも、第二次世界大戦の唯一の実質的戦勝国・米国による圧倒的な軍事力、経済力(米国の犠牲・負担、他国の米国依存)に支えられ、機能してきました。米ソ冷戦中の西側世界、冷戦終結後は全世界が米国の世界の警察官の恩恵を享受していたともいえます。二つの体制の抱える矛盾は、米国の力が相対的に低下し、その役割を放棄し始めるにつれ露呈します。最近ではトランプという自国・自分ファーストの米大統領の下で、その矛盾・混乱は全世界に拡大しています。

国際法や協定による秩序は、国内法のような公権力による強制、警察権・検察権、司法権による裁判、刑罰による担保がなく、参加国の良識に頼っているに過ぎないのです。特に重要な立場の米国大統領が、「自分には国際法等意味がない」と豪語するに至っては、秩序が自壊するのは自明の理です。

固定相場が前提だったIMF体制では、勤勉により労働生産性を高め、実質的為替レートが切り上った国(最初は西独・日本、現在は中国)が、自由貿易のGATTの下で比較優位に立つので、IMF体制は国際収支不均衡で崩壊を始めます。ポンドの国際通貨脱落、スミソニアン協定、プラザ合意等々。貿易赤字に耐えられなくなったトランプ関税は、第二次世界大戦前夜の様相そのものです。

この状況下で日本はどう生き抜くか。まず日本を耐久力、外交交渉力ある国に立て直すこと。繁栄した国はあっても繁栄し続けた国はないとの歴史の必然・人間の弱さに挑戦するには、①自分の可能性のなかで国民が自立自助の気持ちを失わず日常を送る。公益を考え勤労意欲を失わず努力する。②結果として他国より労働生産性の高い日本経済を再生する。第二に米国は日本にとって、安全保障・経済の最重要の同盟国との現実を認めつつ、米国が日本を無視できない環境・条件を創る。オーストラリアやASEAN諸国とアジア版EUを考えてみる。安保改定に努力した岸元総理、ロン・ヤス関係の中曽根元総理、これ等親米の元総理は、同時にアジア外交重視の政治姿勢だったのです。

予算が成立したので、社会保障国民会議で議論されている消費税減税について考えましょう。総選挙で多くの党が、①全廃②時限的③食料品に限定の違いはあれど消費税減税を公約。選挙に圧勝、行政権を担う与党・自民党は、公約実現の義務を負います。公約は「社会保障国民会議で食料品消費税引き下げの検討を加速」です。引下げは検討の結果次第ということでしょうか。

日本は議院内閣制の国なので、「私か野田さんのどちらを選ぶか」でなく、法的には政党選択の選挙です。過半数を得た政党党首が、国民主権を預る国会の指名で行政権を付託され、総理大臣となります。公約は政党が行い、総理大臣は党代表として選挙を闘うのです。しかし「総理大臣としては年度内に法整備」、「食料品非課税は私の悲願」、「国民会議の議論を加速し、6月にも結論」等々の総理の発言は政治的には極めて重いものです。

国民民主党の玉木さんから消費減税消極発言があり、学者・経営者・団体代表者の多くも反対、メディアにもここにきて消極的論調が目立ちます。①社会保障給付の財源なので安定的代替財源が必要。②①が不明確だと国債増発・長期金利上昇・円安・輸入物価高騰・消費者物価上昇になる。③レジ改修に経費や時間がかかる。④課税対象の外食産業の経営を圧迫する等々です。

私はそれ以上に、国民の期待どおり食料品価格が8%下がるのか、仮に国民の期待を裏切る事態が生じると、来春の地方統一選挙、2年後の参議院選挙での悪影響が心配です。消費税は取引各段階での付加価値が課税対象で、仕入れの消費税分を次の段階の業者に転嫁・回収し、最終消費者がそれを最後に負担する仕組の税です。食料品を「免税」にした場合、各段階の納税者は証明書により1年後に申告して負担消費税分の還付を受けられますが、「非課税」にした場合はこの仕組みは機能しません。①「免税」の仕組みでは業者間の力関係でこの仕組みが機能しない可能性(転嫁拒否・伝票不交付)があり、②「非課税」の場合は最終販売者は消費者に転嫁できないので、消費税は非課税でも販売価格が高止まりする可能性が大きいのです。

私は物価対策は減税や現金給付等の一時しのぎの対症療法でなく、労働生産性向上による強い経済の再生、賃上げ、円安解消等の根本治療が必要との立場です。民主制の下での各野党の選挙公約、総理としての高市さんの発言の重さから、減税の取りやめは難しいでしょう。となると食料品価格低減の期待を国民が実感できぬ場合、代替案の議論をしておく必要がありそうです。

米国・イスラエルとイランの戦闘の決着が見通せず、中東原油の輸送路のホルムズ海峡封鎖状態が続いています。原油の価格高騰が続き、先物はバーレル100ドルを突破、日本を含む世界経済は先行き不安状態です。原油価格上昇による世界経済落込みのIMF予測は既に本欄で述べましたが、それを反映してか株式市場は全面安。原油を含め資源、原材料を輸入に依存する日本は、円安もあってその影響は大です。一方で過去の「石油ショック」の苦い経験から、諸外国に比べ日本の対応策は進んでおり、冷静に対応したいものです。

昭和48年(1973)の田中角栄内閣当時に第四次中東戦争があり、産油国は生産削減と価格引上げに踏切り、現在と同様の供給逼迫と価格高騰が生じました。丁度「列島改造論」による土地価格高騰による経済バブルの入口にあったこととも重なり、「狂乱物価」と言われた状況でした。人心も不安定で、「トイレットペーパーがなくなる」等の流言飛語も。物価高騰も現在と違い2ケタを超す不安な世相でした。夜間照明・ネオンの自粛、自動車利用より公共交通機関利用、節電等々の省エネの呼びかけを今でも懐かしく思い出します。

この苦い経験から現在の日本では、原油供給危機への対応が当時と比べ随分と進んでいます。①原油備蓄は官民合わせ 270日分以上あり、中東原油に依存しているアジア諸国のなかでは中国の200日を超え飛び抜けて高い数字です。②発電エネルギー源の原油依存度も、石油ショック時に比べ大きく変化しています。現在では㋑天然ガス、㋺石炭、㋩原子力に次いで重油は4番目です。天然ガスはオーストラリア、マレーシア等からの調達が大半で中東依存は低いのですが、天然ガス価格は原油価格に連動して動くので、戦闘の終結と原油価格鎮静化が待たれるのは当然です。

原油供給不安の影響を最も受けるのは、①物流・輸送用デイゼルの軽油、②石油由来の二次製品材料(ナフサ等、ポリ製品)、③マイカーのスタンド給油でしょう。①②は物価高騰の原因となり、③は財布に直結し、投票心理に影響が大きいと言われます。日本でも財政援助でガソリン価格抑制を行っていますが、ガソリン使用を促進する価格抑制は疑問です。本当に困る人、地方税非課税世帯に緊急給付金の支給ならともかく、ガソリン節約・我慢に反する価格抑制策は正しいのか。豊かななかに慎ましく、我慢の気持ちをを忘れて国に援助をねだる国民の国は、衰亡の途を歩むのはローマ帝国から現在まで歴史の教訓です。

先週に続いて物価高騰の原因の円安について。円ドルの交換レートは各々の購買力(物を買う力)だけでは決まりません。雑誌エコノミストの調査で、マクドナルドのセットが各国でいくらかの比較があります。日本で1000円、米国で20ドル(3000円)とか。現在の1ドル160円は購買力でみると、円の交換比率は3分の1も低いのです。つまり日本の技術、日本人の労働力が3分の1も低く買われ、外国のそれを3倍も高く買わされているのです。

為替市場で決まる円ドルレートと購買力を対比したIMFの調査では、1984年から2016年の間は、円ドルレートは購買力より円高で、それ以降は円安に転じています。円高のメリットは原油や天然ガス・食糧等の輸入品を円表示で安く輸入でき、物価安になること。デメリットは1ドルで160円分でなく110円の日本製品しか買えないので、輸出が難しくなること。海外進出企業の利益を国内の連結決算に計上する時、100万ドルが1億6000万円でなく1億1000万円の表示になるので、円の表示で減益になることです。仮に110円になれば、日本のGDPのドル表示は40%増え、ドイツを抜いて世界3位です。

為替市場の相場は、実は購買力以外に多くの条件、思惑で決まります。①その国の経済の現状、先行き。石油危機等への耐久力等。②貿易収支・経常収支が黒字か赤字か。③国の債務(借金)・国債発行残高の多寡。④通貨を持つことで得られる利益、公定歩合の水準。⑤通貨の流通量の多寡等々。円の現状は②と購買力はドルより優位。①は高市内閣が強い日本経済を目指し努力中。③国債等の国家債務は多く、⑤は金融緩和から転換途上。④も現時点では公定歩合は低率。となると円高による物価高抑制を目指すには、㋑金利引上げ・金融引締め基調の経済運営、㋺強い日本経済を創る財源の為に対処療法的政策をやめ、民間投資促進策に集中することです。

強い経済・通貨は、その国の労働生産性が比較優位にあることが必須条件。日本の高度・安定成長期は1ドル70から110円台で、このことが当時の日本の強い対外交渉力の基盤でした。昨年8月13日の日経新聞の経済教室で、深尾京司さんが「高度・安定成長期には相対的に高い労働生産性が経済を牽引していたが、近年は有効な設備物投資残高減少と労働の質的劣化が著しい」と述べておられます。円高・物価抑制は、①実質成長率引き上げの国内設備投資。②国民の労働意欲の覚醒にあります。自由な市場経済の日本では、民間設備投資の決定と労働を担う「民」の覚醒を高市さんがどう引き出せるか。

来年度予算案の衆議院審議が超スピードで進み、論戦の場は参議院に。識者の先生方からは、総選挙で圧勝した高市自民党の横暴とのコメントが多いようです。それも一理ある一方、少数野党の結束力のなさ、新しい政党の新人議員の割当時間を消化できない勉強不足もあるのでは。衆議院議長を務めた私は、高市さんには総理大臣である前に、憲法の定める国民主権を預る唯一の国家機関・国権の最高機関・衆議院の議員である誇りを忘れず、国会の権威を護ってほしいと願っています。

米国とイスラエルのイラン攻撃は、衆議院の予算審議が始まった後に起ったので、そのことが世界経済特に日本に及ぼす影響と対応について、国民に理解・協力して頂けるような論戦を参議院で期待しています。具体的にはイランの反撃により戦争が長引き、原油・天然ガス供給が滞り、価格上昇が及ぼす世界経済への影響です。IMFの試算では、原油価格10%上昇(現状は50%まで乱高下)は世界経済の成長率を0.3%下げ、物価を0.4%押し上げるとか。早速の世界株安です。日本はエネルギーを輸入に頼り、特に原油の大半はホルムズ海峡経由の中東からなので、その影響は更に大きいのです。

現在日本では、食料品を中心に物価の上昇が続いています。政府は物価を上回る賃上げ要請を軸に、食料品消費税率の2年間ゼロ、ガソリン暫定税率廃止、高校授業料や給食費無償化等々の対症療法的物価対策を考えています。だが原油価格高騰が続けば、目に見えるガソリン価格や家庭用電気・ガス料金の高騰以上に、全ての生産活動に必要なエネルギー価格の上昇の結果、一時的な痛み止め対策が吹っ飛ぶインフレ圧力がかかってくる恐れがあります。経済の実質成長たとえば「物の生産が5%増え・物価が3%上がる」ではなく、名目成長「物の生産は3%増で・物価が5%上がる」の日本経済の現状をどうするかの骨太の根本的論争・解決策の議論が待たれます。

現在の物価高は、原油を含む輸入品の円表示額の高騰(円安)に原因が。高度成長期・安定成長期の1ドル100円の為替レートなら、原油価格が1バーレル200ドルになっても2万円で輸入できますが、1ドル160円の現状では3万2千円です。今やるべきは人気取りの対症療法でなく、日本の労働生産性を上げ、為替レートをかつての1ドル110円程度の戻す根本的治癒です。円の購買力はマクドナルドのセットが日本で千円、米国で3千円で分かるように、現状の円レートに反映されていません。何故か、どうすれば円高に持って行けるか、根本治療は来週ご一緒に学びましょう。

令和8年度予算案が異例のスピードで衆議院を通過。この審議の在り方への私見は来週の述べますが、とりあえず高市内閣の1年間の内政外交政策を金銭で表示した予算案、政府が私達の日常にどうかかわかるかの一覧表について考えます。財源は私達が納める税金84兆円、税以外の政府収入9兆円、不足分を次世代の利払い・償還に頼る国債発行30兆円の計122兆円です。使途は医療年金等の社会保障費39兆円、教育費等6兆円、防衛費9兆円、道路や上下水道等の公共事業費6兆円、地方自治体を通じ地域住民の日常を支える地方交付金21兆円、過去の国債の償還・利払費が31兆円等。

王様が一方的に徴収する税に耐えかねた領民が決起し、「納税者の同意なくして課税なし」を約束させ、課税の詳細を協議した場が議会の始まりと教科書は教えています。封建時代には、独裁者の判断で納税額は戦費や私的贅沢に使われたので、納税者の不満は当然でしょう。現在の民主制の国では、納税者であり受益者である国民が選んだ国会議員による審議で、税の在り方や使途は決まります。納税者は即ち受益者でもあります。

納税者・受益者が唯一人なら、多くを望めば多く納め、減税を望めば受益が減ることはすぐわかります。現実は納税者は多数多様で、受益者も同様です。だれも負担は少なく、受益の多くを望みます。民主制での集票の為に政治がその声に迎合すると、納税と支出の差は国債発行として累積。不況で税収が落ち込むときに国債発行で景気を回復させ、国民生活を支える。景気回復で税収が増えたら公共サービス増に使わず、国債を償還し次世代の納税使用権を回復する。この政治と国民の良識を前提としたのがケインズ経済学です。

8年度の国債発行額は1兆円増の30兆円で、国債発行額の残高は1150兆円、その償還利払い費は31兆円。令和8年度の国民は、予算の26%、31兆円を前世代が受益した借金の為、自分たちの判断で使えなくなっており、私達も同様の仕打ちを30兆円の国債発行で次世代に残しています。国家は過去・現在・将来世代の共同体とした保守の先達エドマンド・バークは、この現実をどう見るのでしょう。

民主制の避けえぬ欠点である国債増加に、冷徹な金融市場が厳しく反応します。国債増加・国債価格低落・利回り上昇・長期金利上昇で設備投資の条件が悪い国の通貨価値は下落(円安)。現在の物価高はエネルギーや食料品等の円表示輸入価格上昇(1ドル分の輸入が110円から160円)によるものです。「責任ある積極財政」は目先の減税・給付より、労働生産性再生の為の積極的支出であることを国民に理解してもらう、参議院審議を期待します。

ベネズエラについでイランを米国が攻撃。ベネズエラと違いイランでは戦闘が長引き、地域も拡大しており、内外メディアでは、側近の助言を聞かなかったトランプ大統領の判断ミス等批判的論調が目立ちます。世界のエネルギーを支える原油・天然ガス産地での戦闘であり、特に輸送ルートのホルムズ海峡の安全航行が難しいので、原油・天然ガス供給の先行き不安から先物価格が急高騰、世界経済への不安が広がっています。

この不安に煽られてか、日本でも米国への弱腰批判、曖昧姿勢批判も聞かれます。ここは一呼吸置いて、国益を考える必要がありそうです。ベネズエラ国内では自由と民主制が機能せず、米国からすると自らの近くに中国等の影響が及んでいる危機感がありました。イランの場合もイスラム革命後の支配体制では自由と民主制が抑圧され、核開発による中東や世界秩序の不安定への懸念等が介入の理由でしょう。そうであったとしても、主権国家の体制や政策を武力をもって他国が転換を図るのは国際法上許されるのか。米国内の三権分立の連邦憲法の下で、議会承認の手続きは踏まれているのかの疑問が残ります。

国内の法秩序の問題は、主権者たる米国民の中間選挙での判断に委ねるべきでしょう。国際法上は違反と考えている国が多いのではと思います。G7の国々はイランの報復攻撃を非難する一方、米国・イスラエルに同調して軍事介入に協力する姿勢は見せていません。スターマー英首相は、「我々はイラクでの失敗の教訓がある」と違法性のにじむ発言をしています。高市さんが「法的評価は今はできない」と曖昧答弁をしたのは、国益を担う責任者としては当然の姿勢です。話が通じなくなっている、されど国益上大切な国・米国のトランプ大統領との会談を控え、慎重発言は当然です。日米首脳会談では非公開を前提に率直に話し合い、友好関係を保ってきたイランとの間で、安倍さんのように何等かの貢献ができれば高市さんの評価も上がるでしょう。

国内法には、それを遵守させる公権力の裏打ちがあります。捜査、自由剥奪、裁判、処罰等々。国際法は各国の約束・取決めで、その遵守は各国の良識・判断によらざるを得ないのです。第二次大戦後しばらくの間は、実質的に唯一の戦勝国・米国が、軍事・経済の圧倒的力をもって秩序維持、世界の警察官でしたが、その米国の地位が相対的に低下し、米国自身が秩序の混乱を引き起こしているのが現実です。第二次世界大戦前夜の力による解決の様相に戻らぬよう、日本も良識による世界調和を呼びかけうる影響力を回復したいものです。