週刊いぶき

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ベネズエラについでイランを米国が攻撃。ベネズエラと違いイランでは戦闘が長引き、地域も拡大しており、内外メディアでは、側近の助言を聞かなかったトランプ大統領の判断ミス等批判的論調が目立ちます。世界のエネルギーを支える原油・天然ガス産地での戦闘であり、特に輸送ルートのホルムズ海峡の安全航行が難しいので、原油・天然ガス供給の先行き不安から先物価格が急高騰、世界経済への不安が広がっています。

この不安に煽られてか、日本でも米国への弱腰批判、曖昧姿勢批判も聞かれます。ここは一呼吸置いて、国益を考える必要がありそうです。ベネズエラ国内では自由と民主制が機能せず、米国からすると自らの近くに中国等の影響が及んでいる危機感がありました。イランの場合もイスラム革命後の支配体制では自由と民主制が抑圧され、核開発による中東や世界秩序の不安定への懸念等が介入の理由でしょう。そうであったとしても、主権国家の体制や政策を武力をもって他国が転換を図るのは国際法上許されるのか。米国内の三権分立の連邦憲法の下で、議会承認の手続きは踏まれているのかの疑問が残ります。

国内の法秩序の問題は、主権者たる米国民の中間選挙での判断に委ねるべきでしょう。国際法上は違反と考えている国が多いのではと思います。G7の国々はイランの報復攻撃を非難する一方、米国・イスラエルに同調して軍事介入に協力する姿勢は見せていません。スターマー英首相は、「我々はイラクでの失敗の教訓がある」と違法性のにじむ発言をしています。高市さんが「法的評価は今はできない」と曖昧答弁をしたのは、国益を担う責任者としては当然の姿勢です。話が通じなくなっている、されど国益上大切な国・米国のトランプ大統領との会談を控え、慎重発言は当然です。日米首脳会談では非公開を前提に率直に話し合い、友好関係を保ってきたイランとの間で、安倍さんのように何等かの貢献ができれば高市さんの評価も上がるでしょう。

国内法には、それを遵守させる公権力の裏打ちがあります。捜査、自由剥奪、裁判、処罰等々。国際法は各国の約束・取決めで、その遵守は各国の良識・判断によらざるを得ないのです。第二次大戦後しばらくの間は、実質的に唯一の戦勝国・米国が、軍事・経済の圧倒的力をもって秩序維持、世界の警察官でしたが、その米国の地位が相対的に低下し、米国自身が秩序の混乱を引き起こしているのが現実です。第二次世界大戦前夜の力による解決の様相に戻らぬよう、日本も良識による世界調和を呼びかけうる影響力を回復したいものです。

2月20日に米国連邦最高裁は、トランプ政権の関税賦課を違憲としました。議会の承認なしに、トランプ大統領が国際緊急経済法により関税を賦課するのは、連邦憲法の「課税権限は議会にある」との規定に違反としたものです。トランプ政権は直ちに、1974年通商法122条により全ての輸入品に10%の関税を課し、同法上限の15%に引き上げる可能性を示唆しています。

メディアは、①日本経済への影響。②既納付の関税(在米日本企業を含む米国輸入業者が納付)の還付の有無。③対米関税交渉で、関税率を15%にする代償だった約85兆円の対米投資の扱い等について、「専門家のご意見」を報じています。新たな課税根拠の1974年通商法は、㋑不公平な貿易条件で米国の輸出が損なわれる場合、㋺150日に限り課税が可としており、その間に新たな訴訟や米政府の対応が考えられます。関税は米国輸入業者が納付し、価格に上乗せして米国民が負担する税で、中間選挙を控え米国世論・政治がどう動くか。日本の国益を担う日本の政治には、対米交渉や対米投資に一呼吸置き、理屈の通らぬ、されど大切な国・米国を刺激せぬ姿勢を期待します。

今回の最大の注目点は、各種選挙に圧勝し帝王気分のトランプ大統領に、米国には大統領権限を制限する三権分立の伝統・良識が残っていることを示したこと。トランプ旋風で大統領(行政)選、上下院(立法)選を制し、最高裁(司法)の判事も第一次トランプ政権時に任命された人も含め共和党色が強く、三権を共和党が押さえる所謂トリプルレッドの為、トランプ大統領の帝王的振舞いに歯止めなしが「識者」のお見立てでした。それを覆したのが、中間選挙を控える及び腰の共和党議員の造反でなく、最高裁の良識でした。

判決はトランプ大統領には意外でも、判決内容は米国建国の歴史からは当然の保守的なものです。英仏スペインの植民地であった米大陸で、1776年に英本国からの独立宣言した13の英国植民地のきっかけは、1773年の高関税茶葉の輸入に反対するボストン茶葉事件でした。独立した13植民地は、星条旗の13本の紅白の縞模様となっています。

13の植民地は対外的立場を強化すべく、連邦(合衆国)型成の交渉を経て、1788年に連邦憲法に合意。①13州は対等で、上院は人口に関わらず各州2名の議員。連邦政府人事と外交を先議。②下院は人口比議員で構成。税制と予算を審議。③大統領は行政執行権を持ち、国民投票で選出。④最高裁判事は大統領が指名、議会が承諾。憲法審査権を持つ。連邦憲法は三権分立を明文化した最初の憲法と言われ、与党多数の日本も学ぶところがありそうです。

4日のBSフジ「プライムニュース」に出演します。

中道改革連合は167議席が49に激減する大敗。野田・斉藤両代表が辞任、小川淳也さんを新代表に選出されました。党再建の為には、エンジンである地方議員の統一選挙を来春に控え、立憲・公明のまま残っている参議院と地方組織をどう再生するかも含めて、小川さんには立憲幹事長時代の小川から一皮むけて、党代表小川としての力量を発揮してほしいと願っています。

今回の選挙で何故当選できたか分からない自民党議員も正直いるのでは。メディアは「高市旋風」と言いますが、「高市旋風」とは何だったか。平成21年(2007)の鳩山民主党政権誕生、自民党下野の選挙を思い出します。選挙区内でだれも知らない人が、突然「民主党です。無駄さえ省けば何でも出来る」と叫び当選。地道な日常活動・政策論議は何だったのだろうと呆然としたものです。高市さんも私も近畿比例で復活当選したのは苦い想い出です。だが3年後に民主党は大敗し、当時の新人議員は今どうしているのか。「高市総理と一緒に豊かで強い日本を創ります」と叫んで当選した議員には、民主党の二の舞にならぬよう、地道に研鑽してほしいと思います。

民主党旋風、小泉ブーム、安倍人気は、アンティテーゼがそれを創ります。高市旋風は石破前総裁と対象的な明るさ、率直な物言い、潔さ、女性初等国民は「何か違う」と期待感を持ったのでは。だからこそその期待に、謙虚な姿勢で応えられるかが、民主党政権の二の舞にならぬ鍵のようです。

一方で中道惨敗の原因は何かについて、メディアには後講釈の理由が並びます。①選挙直前の結党で、理念や政策を理解してもらう時間がなかった。②与野党で対立していた党の合併は選挙目当ての野合と映った。③旧立憲・旧公明の支持者に当惑いがあった。④公約が論文調で長い。⑤SNSを含め若い層へのメディア対策の失敗等々。各々はその通りですが、私には立憲という政党が、現在でも東西冷戦下の55年体制を抜け切れない層を内包し、党の刷新、時代の変化への適応が遅れ、国民の支持を失った流れの結末に映るのです。

①憲法、②外交防衛、③原子力等で現実的姿勢を徹底出来ず、「中道」に逃避したと思えてなりません。強権体制ではなく、自由・民主制・法の支配の現在の国々では、市場経済や競争社会の弊害を正す為、国民の良識に期待する保守、知性に頼り政策介入を多用するリベラルが選挙で支持を競いますが、外交安全保障や国家の基本には大きな違いはありません。他党頼りの「何」と「何」の中道ではなく、自由、民主制を前提としたリベラル政党として、中道が自らの位置を確立することを健全な議会制民主制の為に期待します。

多くの議員は地元の挨拶回り等の後始末に追れ、各党幹部を除いて永田町はまだ静かです。今後の政局展望等がヒソヒソと。当落が決まり政界地図が定まるとメディアの喧騒も一段落。だが選挙公約や各候補者の訴えは様々な場面特に国会論議を通じて説明や実現努力が大切で、国民もそれを検証し、次回投票の参考にするのが主権在民の姿でしょうか。特に行政権を託された自民・維新両党と高市内閣は、この点への謙虚な対応が求められます。

雪の選挙応援先で、「ガソリンが安くなったので高市さん支持」とのご意見も。石破政権で衆参二つの選挙に惨敗し過半数を失なったなか、予算案等の国会通過の条件として、協力政党の言い分を受入れたのが、①所謂178万円の壁の所得減税、②ガソリン暫定税率の廃止、③高校授業料無償化、④給食無償化等でした。一つ一つは歓迎されますが、①②の税収で賄れていた国民サービスはどうなったのか、③④の財源はどう対応したのか。もし①②③④が結果として赤字国債等で措置されているのなら、国債価格下落・長期金利上昇・円安加速・消費者物価上昇で、①②③④の目先の恩恵等吹っ飛ぶのでは等々が、来るべき国会で議論すべきことではと思います。

国民民主党の玉木さんが、「税収の上振れ(自然増収)は国民に還元すべき」と言います。財務省出身の玉木さんが予算の仕組を知らないはずもなく、物価高騰により水ぶくれの名目増収は、①地方交付税、②医療介護年金や③公共事業費の単価アップ、④政府調達単価、⑤公務員等の人件費アップ等々の物価上昇で当然増える経費に充てられてしまいます。高市さんの主張する生産性の高い、強い経済が実現できれば、物価上昇でなく物やサービスの増加による実質成長の税収増が実現でき、その時には玉木説が正当性を持ってきます。

令和8年度税収見込みは84兆円で、前年度比6兆円の増収(名目値)です。このうち消費税収は27兆円、2兆円の増収見込みで、その全額が社会保障費39兆円の財源となり、医療給付費の45兆円のうち18兆円、年金給付63兆円に15兆円、介護給付費14兆円に8兆円の公費が投入され、保険料の抑制や年金給付の助成に使われます。各党が軒並み公約した消費税減税は、食料品のみで5兆円、全額なら27兆円の減収になり、社会保障給付を維持する為にも代替財源の準備は不可欠です。仮に国債増発で対応すると、国債価格暴落を引金に、日本発の金融恐慌の発生が危惧されます。このことは「みらい」の主張する保険料引下げについても、代替財源か給付抑制がなければ同様。

昨日の投票結果は比例代表の一部を除き確定。自民党が単独で3分の2を確保、目標の与党で過半数233を超え、自維連立・高市内閣は国民の信認を得たと言えます。予算委員会等全ての委員会の委員長を与党で占められる安定多数(243)、全委員会で与党過半数の261まで達成し、3分の2を超えるとは自民党自身も予測していなかったでしょう。国民の日常を支える来年度予算の遅れを覚悟で高市さんが解散を急いだのは、国会の安定運営を期待したからで、それだけに今こそ、高市さんには謙虚さが求められる時です。
国会は衆参両院で構成され、予算案の議決と条約等の批準は衆議院の議決が優先しますが、法律案で衆参の意思が分れた時は、衆議院の3分の2(310)で再議決できないと廃案になります。今回与党で衆議院3分の2を確保したので、参議院で自民・維新で過半数がなく法案が否決されても、衆議院で再議決できるので、高市内閣の国会対応は「決められる政治」を確保したといえます。それだけに、再議決を国民が是とする謙虚さ・丁寧さが求められるのです。
もう一つ高市さんが謙虚に考えておくべきは、自民・維新の今回の議席は小選挙区制の性質上、1位の候補者のみが当選する結果だということです。自民当の小選挙区や比例の得票数は、過半数に遠く及ばない4割弱だということを謙虚に受け止め、異なる意見にも耳を傾け、丁寧に理解を求め、政策の遂行や国会・党運営に当たってほしいと思います。
「解散」は三権の二つ、国会と内閣の関係に係わるので、内閣の行為として憲法に記されています。しかし解散後の「総選挙」は政党に対する国民の選択で、その結果として議院内閣制の下で国会での指名により総理大臣が誕生します。従って解散とその後の総選挙は、総理大臣(総裁)と与党(幹事長)の信頼と充分な意思疎通のうえに行うべきものです。今回の解散までの経過を考えると、高市さんには与党との絆を結び直し、野党とも良好な人間関係を築き、政治運営に当たってほしいと思います。
多党化で過半数を占める政党がない方が良いか、迅速な意思決定が良いか。過半数型成に協力する政党が耳障りの良い提案を条件とし、その財源等の苦い政策は政府・与党まかせの無責任多党化、良いとこ取り多党化(自民党も含め)の現状は、国民に見極めてもらう以外に排除できず、目先の痛み止めの繰り返しは根本的病因の治療を遅らせます。高市さんは耳障りの良い対症療法でなく、自論の生産性の高い日本経済再生の為、異なる意見にも耳を傾け国民に覚醒と協力を求める出発点としてほしいものです。
9日のBS日テレ『深層ニュース』、11日BSフジ『プライム二ュース』に出演します。

総選挙も中盤、各地に応援に伺うと自公対野党の構図が変り、日本社会の価値観の分散による多党化もあって、選挙戦に当惑いがあるようです。首長選挙は自公協力、総選挙は「中道」の立憲・公明対自民も。連立合意した自民・維新の小選挙区での激突も。多党化の評価は人それぞれとしても、単独過半数を制する政党が出ない場合、閣内外協力であれ、野党としての協力であれ、有権者受けの良い提案を協力条件とし、その為の財源や法案処理に責任を持たない食い逃げ政党のある限り、安定した筋の通った政治は難しいでしょう。「政治の安定」を今一度皆で吟味し、一票を行使すべきと考える昨今です。

選挙の論戦を聞いていて、私には理解できないことを二つ。①維新の吉村大阪府知事の辞職のニュースを聞いた時、吉村さんが総選挙に出馬し、いよいよ国会議員として国政に関与するのかと一瞬期待しました。だが知事選のやりなおしと知りガッカリ。日本国憲法は、「主権の存する国民の投票で国会議員を選び」、「国政の権力は国民の代表がこれを行使し」としています。国政の三権の一つである行政権の在り方、国権の最高機関の国会議員定数について、大阪府民が選んだ自治体の首長が影響力を行使するのは、国会の権威、憲法の法理から如何かと議長経験者としては考えていました。維新の松井前代表の言葉を借りれば、「再選されても大阪都構想の民意の確認にはならない」のでは。二度の住民投票で否決され、今回再選されても残存期間終了後また知事選挙、大阪都移行には三度目の住民投票です。議員定数減を主張する維新には、三度の選挙費用の負担を考えると、知事権限濫用の自制を求めたいと思います。

②「中道」だけでなく、維新と公約をそろえる為か自民党も食料品消費税率の2年間ゼロの検討加速化の公約。消費税収年27兆円は法律により全額が39兆円の社会保障財源となり、基礎年金給付の半分、高額医療費の補填、長寿者医療制度の保険料抑制等に充てられています。食料品の消費税収は約5兆円で、この穴埋めがないと社会保障は頓挫します。「中道」のような基金の運用益構想では毎年度5兆円の確定財源にならず、赤字国債増発になりそうです。さて自民・維新はどうするのか。国債増発・国債価格低落・長期金利上昇・円安加速・輸入品価格上昇・消費者物価上昇で消費税引下げ分等吹っ飛ぶのでは。消費税導入、3%から5%引き上げで内閣総辞職した竹下さんや橋本さん、税と社会保障一体改革で10%の道筋を付けた「中道」の野田さん、心ならずも10%を実現した安倍さんは、目先の集票目当ての消費税減公約のオンパレードをどう見えているのでしょう。

突然の衆議院解散・総選挙で議員は選挙区に戻り、永田町は閑散としています。通常国会冒頭解散は過去にも例はありますが、衆参両院で与党が過半数割れ等不安定な政情での解散は初めてで、高市自民党は多党化による不安定な現状打開という難しい賭けに出たと言えます。通常国会は4月から始まる新年度予算案・予算関連法案をまず審議するのが通例で、選挙の為に審議は大幅に遅れるので、地方自治体への予算配分・高校無償化・所謂178万円の壁の所得減税の実施等が遅れ、有権者の判断が注目です。安定多数による着実な政策遂行か、国民の価値観多様化を反映した安定過半数なき連立の継続か。

メディアは①高市総理の解散表明はいつか、②選挙は内閣でなく政党で闘うのに、自民党幹部に高市総裁から相談・連絡がなかった、③野党は国民生活、物価高対策置き去り解散と批判等々と報道。これ等は総選挙の帰趨を占う大切な点ですが、各メディアには、憲法の法理から衆議院解散の意味、解散理由が党利党略でなく正統と認められるか等についての社説・論説が少ないのは、社会の木鐸として物足りない印象です。議院内閣制の憲法下で、党首として総選挙を経験していない高市さんが、「私で良いのですか」と主権者に問うのは、解散のタイミングはともかく、憲法上の唯一の正当な解散理由かと考えます。

憲法は国の事ごとを決める「主権」を国民に賦与し、国民の権力はその代表者が行使するとして、国会を国権の最高機関としています。国会は総理大臣を指名し、内閣に行政権を委ねます。国会と内閣の意見が違った場合(69条の内閣不信任)、主権者の意思を伺う解散・総選挙が明記されています。一方、憲法7条の天皇の国事行為として、「内閣の助言と承認により、国会を解散すること」があります。憲法7条が解散の手続きを記したのか、内閣の権限を記したのかは、国会の権威、三権分立の意義・党利私略解散の阻止の点から永年論争の的でした。ただ事実の積み重ねとして7条解散が定着しており、党利私略の解散権行使を我慢するのは内閣の良識に懸かっていると言えます。

各大臣が「解散は総理の専権事項」と答えるのも憲法知らずで、憲法7条は「総理大臣の」ではなく、「内閣の助言と承認により」と記しています。模範応答は「内閣の助言云々なので、国務大臣として責任を逃れるものではありませんが、任命権者の総理の意向に従うつもりです」でしょう。高市さんには解散について、閣僚は勿論、選挙の実務を担う党幹部と充分な意思疎通のうえ、主権者の理解と協力への努力を重ね、強い経済の再生を期待します。

私が初めて国会に議席を得たのは40年前で、当時の日本は上昇気運に溢れ、この状態が続くとの奇妙な安心感、うぬぼれがありました。当時の日本の労働生産性(時間当りの付加価値生産力)は米国等を上回り、日本の対外競争力は群を抜いていました。戦勝国の欧米諸国は、豊かさのなかの価値感の多様化故に労働生産性が低下し、貿易赤字に苦しんでいました。貿易黒字国の日本には、円高レートへの誘導、輸出自主規制、外国製品の輸入促進、国際的役割分担等の外圧があり、それをあやし、応えることが日本の外交交渉力でした。

戦後80年のなかで、あの時代の日本は最も輝いていて、高市さんが再生したい「世界のどまんなかで花開く日本」の時代でした。日本の歴史は今後も紡がれるのですが、戦後80年の近現代史では、その後のバブル崩壊、失われた40年、そして現在と、日本は「繁栄した国は多いが、繁栄し続けた国はない」との歴史の轍を踏んでいるのではないかと憂慮されます。この歴史の必然から抜け出すには、政治家は勿論、それぞれの立場の国民の覚醒を待たねばならないのは、ローマ帝国の興亡を描いた塩野七生さんの「ローマ人の物語」を読むと良く分かります。

高度成長の果実で、今を生きる私達は皆保険制度、教育無償化、週休5日制や働き方改革、高速道路や新幹線等を、生まれたときにあった当然のものとして享受しています。内閣府の調査では、「現在の生活に満足、おおむね満足」が6割弱とか。一方で国際化が進み、文化の違う国々の価値観に触れ、それを自由に主張し、実践できる日本になっています。衣食住の向上というかつての国民共通の目標等は過去のもの、多様な価値観を主張しても1人で生きていける有難い(?)日本では、家族・地域社会・企業・国への帰属意識が年々希薄になっています。その現状への評価は人それぞれですが、労働生産性の低下、社会の分断、少子化等の先進国病は日本にも例外なく取りついているようです。

先輩世代が残してくれた皆保険保険制度は少子高齢化で収入と支出が合わなくなっている。耐用年数に達した上下水道や橋梁事故のニュースも後をたちません。有形無形の公共インフラの修復・保全は、行政何より政治の責任でしょう。それを可能にする日本の労働生産性再生の為、経営者には賃上げと下請けへの配慮・有効な国内設備投資、国民には勤勉な労働の覚醒を求める前提条件は、目先の集票の為の減税と給付を大合唱する与野党政治家の覚醒では。

新年おめでとうございます。今年もご一緒に学ばせて頂きますので、宜しくお願い致します。歳替り 変らぬものを 極めたし。

今年は戦後80年、終戦の年に生まれた方が80歳ですから、戦争の悲惨さを実体験している世界のリーダーはいません。トランプ、プーチン、習近平等々。戦後の飢え、劣悪な生活環境、街を闊歩する占領軍兵士、そんななか家族を養う為必死に働いた私達の祖父母や父母の世代も皆故人となりました。この世代の頑張りで日本の労働生産性が向上し、戦後復興・高度成長の道を歩むのです。現在では当り前で不満の的にもなる医療保険制度、教育無償化、上下水道等の社会インフラ、土曜休日・働き方改革等は皆その果実です。

日本が生きていく国際環境も変貌しつつあります。第二次世界大戦の損害の大きさへの反省から、人類は国連中心の世界秩序、経済面ではGATT(現在のWTO)とIMFを基軸とした自由貿易体制を創りあげました。第二次世界大戦で唯一戦場にならなかった米国は、圧倒的な経済力と軍事力でこの体制の盟主であり、ソ連を中心とする社会主義、統制と独裁の東側諸国との東西冷戦での自由と民主制の西側の盟主として、冷戦の勝者でもありました。

戦後80年、戦争や戦後の荒廃を知らず、現在の平和と日常を当り前と思う人口が大部分になると、国際秩序も日本社会の価値観も大きく変ってきます。国際社会や日本社会はどう変りつつあるのか、それにどう対処するのか、今回は国際社会の秩序、次回は日本社会の在り方について、①戦争体験の風化、②豊かさのなかでの帰属意識の喪失をキーワードに見てみましょう。

戦後の国際秩序は、各々の国益を認めつつも地球人としての帰属意識、協調と自由競争という矛盾した価値観に支えられていました。この矛盾を表面化させなかったのは、実質的に唯一の戦勝国・米国の経済力や軍事力でした。だが、その米国がベネズエラの独裁者を軍事力で拘束し、石油利権を公然と主張する現実は、米・中・ロの軍事力優先の第二次大戦前の体制に戻った印象です。

戦後の国際秩序の恩恵を最初に受けたのは日本と西独で、戦後復興と繁栄の歴史を刻むことになります。そして現在その恩恵を受けているのは中国でしょう。豊かさのなかでの米国民の油断なのか、官民一体で労働生産性を向上させた国々の勝利なのか。背に腹かえられぬ米国は、自由な競争による国際協調から自国第一主義に舵を切ります。他国の安全保障には距離を置き、自国産業強化に乗り出し、各国にもその風潮が蔓延しています。日本国民がこの変化にどう覚醒するか。後世の歴史家が評価する年になりそうです。

臨時国会は先週で閉会しました。①維新との閣外連立による政策調整の当惑い、②衆議院で辛うじて過半数の連立となっても、参議院は少数なので野党への配慮、③高市官邸からの注文が多い等々、事務所を訪ねてくれる現役の皆さんの話では、税制改正・予算編成に手間取っているようです。例年なら当欄で、来年度予算案や税制改正案が暮しや今後の日本に与える影響につき私見を述べていたのですが、全体像が不透明なので来年に先送りします。多党化による国家意思決定の遅れを、①多様な意見の反映とみるか、②斉合性と迅速性を欠くとみるか、次回総選挙での国民の判断を待たねばなりません。

この一年、政治理念や政治の現状、私達の暮しや経済を学んできましたので、今回は私の年末について、「古い奴だとお思いでしょうが」、豊かさと便利さのなかで失いつつある大切なもの、保守理念の肝のようなものにつき私見を述べ、皆さんのお考えも伺いたいと思います。私は長男、妻は三人姉妹の長女で、各々の「家」の墓所と仏壇を委ねられています。私の実家は京都、妻は東京なので、年末も変わらず京都と東京を往復する毎年です。

年末の数日、京都ではお世話になった故人のお参りの後、伊吹家の墓所を掃除し樒を供えます。仏壇の燈明を整え仏花を供えると、祖父母や両親との事ごとが甦ります。「分を弁える」との我家の家訓の為か、外食や出前をとった記憶は少ないのですが、食糧の乏しかった戦中戦後も当時としては精一杯の食事(今では貧弱なものですが)であったこと等、亡き父母の苦労に感謝です。衣類も母のお手製で、今も手編みセーターを大切にしています。機械編み大量生産の現在では、逆に贅沢に見えるのも時代の変化でしょう。「世間様に顔向けできぬことだけはするな」の祖父の口癖が、保守の伝統的規範と後々で気付くのですが、核家族の現在では、教えてくれる祖父母との会話も限られますね。

年末の最後の3日は東京で、小さな門松を立て、仏壇を清め、その後の「お煮め」作りが私の役割です。昔ながらの里芋、蓮根、人参、しいたけ、焼豆腐、あげ、こんにゃくを、各々別々に昆布、鰹節、酒塩の出汁で煮上げます。これと数の子、ごまめ、黒豆、たたきごぼうとお雑煮が昔から変らぬ我家のお正月の食卓です。昔はなかったローストビーフ等を予め詰込み、冷凍・解凍で宅配する高価なおせち等とは違う、お金をかけず手間をかけ、お金を使わず気を遣う、手造りの我家のおせちです。

今年は今回で終了し、来年は12日からご一緒に学ばせて頂きます。良いお年をお迎えください。1月6日 BSフジプライムニュースに出演します。