週刊いぶき

週刊いぶき

論語を何気なく拾い読みしていたら、「遠き慮りなければ必ず近き憂いあり」の一節が。「遠慮がない」を礼儀を弁えないや謙虚さがないと理解していたのは誤りで、「遠慮のない」は遠く世界的視野で将来への配慮のないことが言源なのかと不明を恥じた次第です。孔子の言葉を念頭に国内外を見ると、成るほどと思うことの多い昨今です。

広く遠く世界のことを考えず、自国第一の政策を重ねていると、近くの国民の支持はトランプ大統領から離れているとの世論調査も一つの例でしょう。相互関税に加え、対イラン戦闘の結果でもあるホルムズ海峡封鎖は米国輸入商品や石油価格高騰をもたらし、物価高騰の直撃を受ける国民の支持は近々に迫る中間選挙でどう出るか。上下院でもし共和党が過半数を失えば、連邦憲法の下で大統領の憂いは深いものになります。

各社の世論調査では高市内閣の支持率はなお高いものの、少しずつ下降傾向です。第二次世界大戦を経験しない国民が大多数でも敗戦のトラウマが残り、占領下に制定された現憲法の下で、日本は軍事力を強化し対外交渉力とすることは現実的ではないでしょう。とすれば、対外交渉力として、かつてのような労働生産性の高い、強い経済力の再生・復活を目指すとの高市さんの高揚感あふれる主張は私も賛成です。問題は現在の円安と物価高の経済状況下でそれをどう実現するかです。私はサッチャー英首相のように、もう少し民間の力を信じ、その覚醒を呼びかけ、うながすことだと思います。国民に自分の価値観主張をほんの少し抑え、もう少し働くことが自分の価値観実現への近道なのを理解してもらう。経営者には利益半分・国益半分の気概を取り戻し、従業員給与や下請けの価格転嫁、国内設備投資に利益を回してもらう要請です。

今は戦時中の産業の国家統制・管理の時代ではないので、その為には政府の役割は①有効な補助金、②租税特別措置、③公的融資等で民間活力を引き出すべきなのでは。「政府が投資する」、「政府が主体となる」等の政策はできるだけ限定すべきだと思います。その為にも、経済団体や労働団体等の多くの人と対話し、協力を求める「国民会議」を設立しては。

①食料品の消費減税、②給付付き税額控除の給付先行、③防衛力強化等々の財源に加え、④強い経済再生・復活の財源を考えると、国債の増発は更なる円安を通じ更なる物価高騰をもたらします。遠い将来の納税者への慮りなく、近くの国民の支持を失うことがあっては、将来の日本の為に的を得たビジョンの実現がかえって難しくなることを恐れます。

来月はもう秋分ですが、まだ猛暑が続きます。今年は異常気象で台風や集中豪雨により各地で災害が多発しています。世界では大規模な山火事や土砂災害のニュースも。二酸化炭素排出による温暖化や海水蒸発が原因と聞くと、「科学技術の発展は人間に幸せと同程度の不幸をもたらす」との言葉を思い出します。科学のもたらす便利さや快適さに感謝し少しずつ享受ではなく、もっと便利に・もっと快適にとむさぼってしまう人間の業の恐ろしさでしょうか。

NHKのニュースで、「明日も猛暑が続きます。外出を控え適切にエアコンを使ってください」との呼びかけを聞くと、その通りだがエアコンの電力発電の為に排出される二酸化炭素が更なる温暖化の原因を作ると考えると、私達は「我慢」や「節度」を忘れ、快適・便利な今を最大限に享受しようとする業の蟻地獄に落ち込んだのかと思います。

人間社会だけでなく、自然環境も温暖化で大きく変わっているのに改めて気付きます。今年で終戦81年ですが、母と弟と3人で終戦の玉音放送を聞いた昭和20年8月15日正午は、庭で「ジイジイ」と鳴く油蝉の声が騒がしい日でした。あの頃の子供の蝉採り遊びの対象は、灰色の小さなチッチ蝉と茶色の中型の油蝉でしたが、温暖化の進む現在ではチッチ蝉は姿を見せず、油蝉は南方系の羽根が透明なシャンシャンと鳴く大型の熊蝉に押され、その数は大幅に減っています。一椀の白いご飯が夢でしか食べられなかったあの当時を経験している私達の世代には、現在の快適で便利な生活の中でも節約・我慢という言葉が心のどこかにあって、電気のスイッチを切ったりすると、「ケチなことをしないで」等と小言をくらうのも時の流れでしょうか。

日本のガソリン価格は産油国の米国より安く、G7のなかでは最低です。それはガソリン価格維持の補助金(国民の税金)が投入されているからです。「軽」しか移動手段のない地域や農業・中小企業用の燃料には地方自治体を通じて一定額の助成金を交付し、その他のガソリン価格は欧米諸国並みにすれば、「強い日本経済再生」の財源の一助ともなり、温暖化の原因である排出ガス抑制にもなると思います。

ネット社会になり、AI利用が本格化してくる将来を思うと、子供や孫の時代の日本社会、地球の自然環境はどうなっているでしょう。人間の業に応える政策は安易な集票手段であっても、我慢や節約を説く政治、それを支持する有権者がそろそろ多数になってほしいと思うのは、古い考えでしょうか。

暑い毎日如何お過ごしですか。8月は人生でお世話になった故人や亡き友人等のお参り、父方や母方の墓所への供花が毎年の習慣です。祖先の霊が浄土に戻る道を照らす16日の京都五山の送り火で私の夏は一段落です。私は仏教徒ではありませんが、少し前まではこれが日本の習慣で、民族の生き方・文化だったと思います。今では豊かさと科学の発展で1人でも暮らしていけるので、家・祖先・家族・地域社会の絆が失われ、日本人の協調性、悪く言えば同調圧力はキリスト教的一神教・自己主張の西欧文化に変化しているようです。
この夏読み返したスペインの哲学者オルテガの「大衆の反逆」には改めて考えさせられました。世界(当時のヨーロッパ)で無敵艦隊を誇り、第一の強国であったスペインは英国に敗れ、米スペイン戦争で中南米の権益やフィリピン等の植民地を失います。経済的繁栄が止まり、国民に不満が高まるなかオルテガは述べます。「経済や科学等がもたらした現在を護る努力をしない大衆は、大切なものを失う」と。この国民の不満が共和制を崩壊させ、フランコ将軍の強権ファシズム政権を生む内戦を予言していたかのようです。高度成長後の停滞の世相や日本国民に相通ずるようにも思えます。
オルテガは大衆を批判したのか、大衆におもね支持を得ようとする政治を批判したのか。総選挙前は多くの野党は消費減税の大合唱、それを心配し自民党も巻き込まれた食料品消費税ゼロを検証しましょう。減税は歓迎されますが、大衆に減税の損得を説明できているか。①最終消費者は税を払わずとも、最終段階までの税負担はとりあえずは残るので、本体価格はあまり下がらないのでは。②社会保障財源なので減税分の補填がないと保険料や自己負担は上がるのでは。③万が一にも国債増発で財源を補填すると、長期金利上昇と円安加速で、経済停滞と輸入物価上昇により国民生活は大変なのでは。
大衆がいちばん惑わされるのは、税の自然増収があるとの説明です。税は経済成長により増収となりますが、名目経済成長率はモノの増加と物価上昇の合計です。物価上昇分の増収は歳出面の物価上昇、例えば地方自治体の住民サービスへの交付税・年金・医療・介護・教育・公共事業の単価増に充てられ、消費減税の穴埋めには使えません。モノの増加、即ち実質成長による増収分こそ「強い日本経済」の財源に充てるべきですが、それを新規施策や借金返済に充てた民主政治の指導者を見出すことは稀です。消費減税実施は決断したのですから、その利害損失を国民・大衆に広く伝え、「知らなかった」との反乱を抑えられる国会審議を与野党に期待したいと思います。

7月28日毎日新聞朝刊6面に経済学者浜田宏一先生の高市経済政策についてのインタビュー記事が。浜田先生は東大や米イエール大等の教授を歴任された碩学で、第二次安倍内閣の所謂アベノミクスの理論的支柱でしたが、現在は米国におられ、久しくお目にかからなかったので、懐かしく拝読しました。「高市さんのファン」としつつも、「経済のことが分かっているのか」とのご託宣。
浜田先生が日本におられた頃は各界の方々10人弱の勉強会のお仲間で遠慮なく意見交換し、ご教示頂きました。第2次安倍内閣時は今と違い、消費者物価や名目成長率はマイナスで、円レートも1ドル80円台でした。浜田先生の主張は、①金融緩和(通貨量増・公定歩合引下げ)、②足らざるところは財政出動で補えば、③民間設備投資等が誘発され、デフレ脱却が可能でした。所謂安倍さんの三本の矢による好循環です。私は①②はある程度必要でも、㋑高度成長期のような将来展望がなく、㋺国際化が進み、㋩経営者が国家意識より株主重視では、経営者の覚醒なしに理論通りには国内有効需要は増えず、インフレと財政規律崩壊との立場で、失礼な論争があったのも懐かしい思い出です。
アベノミクスの結果として名目成長率と物価は上昇しましたが、円レートは約半分に下落、財政の信認は低下し、日銀は金融正常化の旗を振れていません。浜田先生はインタビューで、「心変わりしたのかと聞かれるが、状況が変われば(デフレ脱却が完成すれば)意見は変わる」と述べておられるのは当然です。浜田先生は「①金融正常化(米国政策金利3.5%までの公定歩合の引上げ)、②財政支出膨張はインフレを招き、低所得者の生活が苦しくなる」と主張され、私達は意見が一致しているなと頷いたものです。浜田先生は私のメディア等での発信を目にされたのか初夏にお手紙を頂き、「安倍政権時とは経済状況が様変わりなので、現状では伊吹の話に同感」と述べておられました。アベノミクスを金融面で支えた黒田前日銀総裁も浜田先生と同意見のようです。もし安倍さんが元気なら、円安・消費者物価高騰の現状でどのような財政金融政策を採るだろうかと浜田インタビューを読みました。
高市さんの「強い経済の再生」という国家目標には大賛成ですが、現状を考えどのような政策で達成するかが問題でしょう。「我を非とする者は吾が師」と荀子は言います。安倍さんの師・浜田先生のご意見を安倍さんを師とする高市さんも一度伺ってはどうでしょう。
10日から16日までお盆休みなので、10日、17日はお休みとし、24日からご一緒に学ばせて頂きます。

沖縄辺野古の飛行場建設埋立て工事現場に、平和学習に訪れていた同志社国際高校の女子生徒の乗船した基地反対抗議船が転覆、学生と船長が死亡した事件は記憶に新しいところです。この事件は2つの面から考えさせられる問題を含んでいます。①研修旅行中の生徒の安全管理。②日本の安全保障、日米安保体制(安保条約)という国論の分かれる場所で、反対運動の抗議船に生徒を乗船させることが「教育における政治活動の禁止」から妥当か否か。

①について報道は、㋑引率の教師が同乗していなかった、㋺抗議船は不特定多数を乗船させる許可を取得していなかった、㋩操船を生徒に委ねた事がある、㋥当日の気象や海洋状況の確認が不十分等々です。報道通りなら引率教員の責任はどうなるのか。他方、抗議船の運航団体の法的責任は所管官庁や捜査当局に委ねればなりませんが、将来ある最愛の娘さんを失われたご家族の心情を思うと、やり切れない気持ちが私にもあります。
②学校教育における政治的中立は、文部科学省が教育基本法第14条2項に定める「政治的中立」に違反するとして、学校法人同志社に注意を行い、実務を預る京都府が私学助成費減額を検討と報道がありました。一方でこの動きに対し、学校側は異議を申し立てたとか。学校での政治教育が萎縮すると一部の教職員グループの声も。私は学校法人同志社傘下の中学校で3年間学び、平成18年の現教育基本法改正時の文部科学大臣だったので、私見を述べたいと思います。
現教育基本法14条2項は「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他の政治的活動をしてはならない」とあり、この条文は昭和22年の旧基本法8条2項から変更はありません。中立な政治教育は、一方の主張でなく両論を正しく伝え、生徒の判断を求めるものです。例えば「①辺野古の飛行場は普天間の米飛行場の代りとして建設されている。㋑反対は環境保全、米軍基地反対。㋺賛成は人口密集で危険な普天間返還のため必要。②㋑反対は日米安保は不要、㋺賛成は日本の安全保障のため必要。③君達も①と②について考えてみよう」と生徒に問いかければ、萎縮等心配せず授業はできるのでは。
文部科学大臣は「諸般の状況を判断して」と注意理由を曖昧に述べていますが、地元では教育現場の状況を本部はどの程度把握しているのかとの声も聞きます。学校法人の文科省への報告は、私達にも公開してほしいと思います。

皇室典範改正案は国会で議決されました。前回に続き、日本と皇室の歴史を踏まえ、憲法や現皇室典範を正しく理解し、「世論とは何か」を弁えて皇室典範改正を議論してほしいとの思いで、皇室に関するメディアや政治の最近の風潮に警鐘を鳴らしたいと思います。
明治維新時に急速な近代化の為迅速な意思決定を必要とした新政府が、「万世一系の天皇日本国を統治する」との大日本帝国憲法の肝である皇統安定の為に作成した旧皇室典範に、終戦後手を加えたのが現皇室典範。6月10日の産経1面で私は、現皇室典範は皇統の歴史を全て現わしたものではなく、大切なのは千年以上も国民に敬愛されてきた皇統の歴史ではとの趣旨を述べています。それは①父方に天皇のお血筋を持つ(男系)御子による皇位継承が乱れなく受け継がれてきたこと。②男系の女性天皇は相当数存在した。③生前ご譲位(強制・自発)は多数。④現皇室のご祖先の光格天皇(閑院宮家よりのご養子)も含め、男系のご養子も多くあった等です。
皇統の将来を想定し、その安定の為の典範改正の議論は、恐れ多いことですが、特定の皇族方の将来を諸々想定し議論しないと判断し難いのですが、それは皇族の方々の人間としての尊厳に係わるので慎みがあって当然で、それ故に議論が抽象化するうらみがあります。慎みを忘れた一部女性週刊誌やメディアでは、皇族方をアイドルのように扱い、皇族方が特定の意図をお持ちかのように描いてみせるのは如何なものでしょう。
天皇陛下の「制度的なことへの発言は控えますが、改正は国民の理解を得るものであってほしい」との当然のご発言を自分に都合良く忖度し、「養子制度にご懸念を示された」等のメディアの発信は、天皇陛下が政治的ご発言をされたと述べるに等しいことに気付かぬのも困った姿勢です。
気になった政治家の発言を2つ。6日の参議院決算委員会で共産党の小池晃書記局長は、「世論調査では養子制度への賛成が低い」とし、「国民の総意ではない」と。護憲の共産党なら、憲法前文「日本国民は正当に選挙された国会における代表を通じて活動し」をご存知のはず。世論調査は参考にしても、選挙で選ばれた国会議員が国民の総意を代表するとの慎みと自負が欲しいものです。
中道の野田佳彦元総理は5日の広報ビラで、「養子制度を認めると、麻生副総裁家は令和の藤原家になる」と。藤原摂関政治は、大河ドラマ「光る君へ」ののように娘を入内させ、誕生した男子を皇位に就け、外祖父として権力を行使したことを言います。仮に麻生さんの妹・三笠宮親王妃殿下が養子を迎えられても、その方もそのお子様も麻生さんとは血の繋がりは全くありません。好漢野田さんの論理は、摂関政治を学べば無理があるのでは。

中曽根弘文さんが6月28日、富山での講演で①愛子様(内親王殿下)は天皇にはなれない、②天皇になられたら結婚できないと話したとか。参議院当選7回の経験豊かな中曽根さんは、両院議長の下の皇室典範改正会議の自民党代表の1人です。天皇(皇室)の地位は、憲法により「主権を有する国民の総意に基づく」ので、全国民の主権を預る唯一の国家機関である国会が典範改正を協議し、改正案は今週参議院で審議されます。

落ち着いた紳士の中曽根さんが自分の立場とこのタイミングを考えず、何故あの発言なのか。②は論外として、①は現皇室典範では間違いではありません。森衆議院議長が記者会見で、「男系のご養子の子孫は皇位継承権がある」と発言し、「各党合意ではない」と批判を受け、「現皇室典範の解釈を申し上げた」と釈明したのと似ていると思いました。現行法の解釈としては正しくとも、立場やタイミングで発言を控えるべき事柄は多くあるのです。

明治維新で急速な近代化を迫られた新政権が、皇室のご意志かは不明ですが、迅速な意思決定の為権力を集中しようとし、「万世一系の天皇日本国を統治する」との大日本帝国憲法を定め、その皇統安定の為に作成したのが旧皇室典範です。戦後それに手を加えたのが現行法です。武家に権力が移った13世紀の承久の変から19世紀の明治維新までの約700年間と戦後の80年間は、皇室は税や苦役を課す権力の王でなく、日本人の生き方、文化の象徴としての権威の王であったが故に、国民の敬愛の的として世界に類を見ない千年を超える皇統を紡いでこられたと思います。

6月10日の産経新聞1面のインタビューで、私は皇室典範改正には皇室の悠久の歴史を学ぶことを国会に望むと述べています。皇室の歴史では、①生前退位(自発・強制)あり、②父方に天皇の血筋(男系)の女性天皇は存在、③現皇室は男系の閑院宮家より光格天皇をご養子に迎えたお血筋、④しかし女系(父親が皇室以外の方)天皇は存在しない。①~④こそが皇統の歴史・伝統で、皇室典範とはかなり違います。この歴史と皇室の現状を踏まえ、今後も国民の敬愛の的としての皇統を継いでいくには、中曽根さんが思わず口にした具体的お名前、ご結婚のお相手、御子ご誕生、その性別等々を想定し、あらゆる事態に対応せねばならないのですが、これは公に議論するのははばかれることでもあります。誰かが皇族のご意向を忖度し、影となって日本国の為に勤めていただくことを願うばかりです。

22日のBSフジ「プライムニュース」に出演します。

科学技術の進歩を豊かさのなかでお金で際限なく利用する便利さを当然と思い、胡座をかき、「少しの我慢」や「ちょっとした手間」を嫌がっている現代の私達に、米イラン戦闘による石油不足、価格高騰は一つの教訓でした。石油から精製するナフサ(粗製ガソリン)は、塗料・シンナー・包装材・ペットボトル等の原材料です。これらの供給が滞り、工務店等では仕事に支障が生じ、包装食品、医療用手袋の値上げや不足の報道も。
自販機でペットボトルの飲み物を買うのが当たり前になったのは、40年ぐらい前だったでしょうか。もっと前は缶やガラス瓶の自販機で、更にその前は自販機ではなく小売店で買っていました。お茶やコーヒーは外で買うのではなく、自分でお湯を沸かし作っていました。私の事務所や自宅では、今もペットボトルは使いません。自分でお茶を入れると、番茶、煎茶、玉露の味や香りを飲み分ける楽しみもあります。お茶を淹れる温度や時間が茶葉によって違うと両親が言っていたのはこれかと、改めて生活の知恵を想い出します。何よりペットボトル購入額の何十分の一で済みます。
食品スーパーやデパ地下では有名店の料理や惣菜がプラスチックのパックで並びます。それを買ってテーブルに並べると手間は省け、楽は楽。我が家では材料を買って主菜は妻が、副菜と吸い物は私というのが老夫婦の役割分担です。昆布を水に浸けて、粉末の出し、煮切った酒を合わせ、その日の気分で合わせ味噌、赤味噌、白味噌、澄ましに仕立てます。小さな畑のトマト、胡瓜、茄子、唐辛子や冷蔵庫の残り物で副菜を二つばかり。手間は少々かかっても、お金はかかりません。気は使ってもお金は使いません。母はこうして育ててくれたんだなと思うと、行き届いた時代を当たり前と思っていたなと反省です。
先週末は京都の日程と月曜日の講演が重なり、新幹線に乗ったところで携帯を忘れたのに気付き、結局4日間携帯なしの毎日。携帯は①連絡用の電話・メールと②最新ニュース、③天気予報、④経済情報等の把握に使います。②③④はテレビのデータ情報でしのげましたが、①は「連絡したいが」等と事務所の固定電話に連絡があり、大失敗。他人を含めた便利さの網から抜け出せない自分を再認識。携帯の届かぬ山奥のポツンと一軒家の人は不便なのか、幸せなのか等と思いました。皆さんはどうでしょうか。

米イランの戦闘終結覚書への署名が19日にありました。①レバノンを含む全ての地域の戦闘の即時・恒久的終結等14項目の合意です。ただ詳細は今後60日間の協議による最終合意如何が多く、米・イラン双方の解釈・思惑が食い違っており、楽観できないのでは。「覚書」は外交責任者間の合意で、米イラン双方が国家としての義務や債務を負う最終合意は、民主制の国では条約・協定として主権者を代表する国会(米国では上院)の承認が必要なはずですが、御教示があれば是非。

双方の発言・思惑の違う点を記します。㋑イランは核兵器を製造しないと記されていますが、現存する濃縮ウラン(核兵器の原材料)の処分の記述はなく、双方の発言に大きな差があります。②イランは30日以内にペルシャ湾の航行を戦闘前の状況に戻すとありますが、その後通航料ではなくとも他の名目で対価を徴収するかは双方の発言は違っています。イランにこれを許すと、海洋法上の自由国際海峡(マラッカ・台湾等々)で同様のことが今後生じ、世界経済に影響が出るでしょう。

今回の戦闘で米国は、㋑イランが核兵器を製造しないとの覚書での約束、㋺最高指導者ハメネイ師の殺害に成功したものの、㋩イランの体制転換に失敗し、㋥経済制裁の解除、㋭イラン産原油・派生品の輸入制限解除、㋬凍結資産の解除、㋣3000億ドル(50兆円弱)の対イラン復興基金の設立等々譲歩が多すぎるようです。何よりもホルムズ海峡を封鎖し、世界経済を人質に取れば、超大国米国にも対抗できることを世界に示され、米国の威信は大きく傷つきました。米国内のガソリン価格高騰以上に、この現実を11月の中間選挙で米国民がどう評価するか注目でしょう。

今後の日本への影響・対応は。全ては60日間の話合い如何です。注目すべきは、①レバノンの親イラン勢力ヒズボラとイスラエルの戦闘が続くと、覚書違反となります。②イランの濃縮ウラン処理に合意ができないと、米国の面目は丸潰れです。③ホルムズ海峡の自由で安全な航行の実現はどうか。これ等で意見がまとまらないと60日後の戦闘再発もあり得るでしょう。日本にはホルムズ海峡の機雷除去への要請があるかも知れません。日本の存在感を示す為にも参加する場合は、憲法や国内法の制約があるので、イラク戦争時と同様に戦争終結が条件となります。米イランの具体的合意成立の為、日本が出来る役割は何かを高市政権が世界に示せれば、日本の存在感は高まるでしょう。

日本銀行は先週の政策決定会合で、政策金利を0.25%引上げ1%としました。米・イスラエルとイランの戦闘による原油供給不足・価格高騰が、円安による輸入品の円表示額高に拍車をかけ、多くの価格を押し上げている現状への対応とか。物価高には、①消費や投資過熱によるもの。②消費や投資の過熱ではなく、円安による物価上昇があります。今回の利上げは、②の円安による物価高への歯止め効果、結果としての例えばガソリン消費節約を促す等経済全体への警鐘効果が期待され、私は遅きに失したとの印象です。
政策金利引き上げは私達の生活にどう影響するのか。定期預金金利が上がるので利子収入は増えますが、住宅ローンの負担も逆に増えます。大きくは日本経済や財政への影響を通じ、私達の日常に係わってきます。企業の借入金や消費者ローンの金利が上がるので、設備投資や消費は抑制されます。また国の財政(例えば一般会計122兆円)の4分の1は国債29兆円で賄われているので、その金利だけでなく、今まで発行した国債の残高1145兆円も借り換えでしのいでいるので、借り換え金利も上昇し財政運営は難しくなります。
だが利上げで良いことも期待されます。消費者物価高騰の原因は円安による輸入物価の円表示価格上昇です。かつては1ドル80円だったのが現在160円ですから、輸入品は2倍の値上りです。為替レートは①その国の経済力の強さ(労働生産性の高さ)。②国際収支が黒字か赤字か。③その通貨の購買力。④その通貨の流通量。⑤その通貨を持つことで得られる利益(政策金利が高いか低いか)。⑥その国の借金(国債発行残高)の多寡等で決まると述べてきました。
今日の日銀の決定は④の修正により円高の方向即ち消費者物価抑制の方向に働くはずです。だが本格的な円高に流れが変わるには、①を通じ②③の一層の改善が望まれます。その為には、例えば高市さんの17分野のような戦略的産業への国内設備投資と労働意欲の再生による日本経済の競争力回復が大切ですが、⑥についてマーケットに隙を見せぬよう、積極財政でも「責任ある」を忘れず、必要な負担を受益者たる国民に求めないと、消費者物価の更なる高騰という気付かぬ「大増税」で国民を苦しめることになります。
米連銀が利上げ志向を匂わせたように、他国もインフレ対策として政策金利を引上げるので、今回の利上げ効果が相殺されてしまったのです。今後の日銀の金融正常化への、物価の守護神としての姿勢が何よりも期待されます。