組織特に政府や自治体の意思(政策等)決定には、色々な手法・制度があります。大別すると独裁制と民主制。どちらも一長一短ですが、私達は経験から、民主制の方が居心地がいいことを学び、多くの国が民主制を採っています。独裁制には①個人・一族支配、②一党支配、③民主制の衣をまとった独裁があります。サウジアラビア等は①、中国は②、ロシア等の強権国家は③と①の混合でしょうか。独裁制は意思決定が迅速ですが、個人や限られた人達の独断、判断ミスが組織を危険に陥れる危険があります。
一方民主制は主権者(構成員)が各々の価値観に基づく意思表示(投票)をし、多数決で組織の意思が決るので、決定までに時間がかかると言われます。しかし有権者も候補者も一定のルール(法律)の下で、自由な発言・行動が保証されています。独裁制との決定的な違いですが、このことが民主制の欠点の原因にもなります。主権者が自己の損得、不満や嫉妬の感情で投票すると、全体の判断を損うポピュリズムに陥るからです。日本近代化の先達・福沢諭吉も「人民合衆して暴を行う。独裁者の暴に異ならず。唯一人の意に出るか、衆人の気になるか」と述べています。
個人の尊重と自由を基本とする民主制を健全に機能させるには、私達の心の「暴」を抑える良識が必要です。最近の政治は、SNSの普及もあり、印象操作やフェイクニュースに各種選挙や世論調査が左右されています。ラインで一方的に入ってくる情報は、比較しての理解・判断が難しく、受け手の識別・判断能力がないと、意思決定をゆがめる危険があります。選挙の公正の為この弊害を抑えるべく、多くの国ではネット事業者に偽情報拡散防止義務を罰則付きで課しています。日本でも早急な対応が必要なのではと思います。
ネットが沸騰していたとご連絡があり、4月21日の参議院予算委員会での立憲議員の質疑議事録を読みました。ネット求人仲介のクラウドワークスが、「自民・立憲、財務省を批判し、国民民主・参政を称賛する書込みの仕事を募集」しているのは、世論が操作されるとの質問でした。これに対し国民民主の幹部が記者会見で、「立憲議員があたかも国民民主がクラウドワークスを利用したかのような質問をした」と批判。この批判を根拠にネット上で立憲批判が沸騰していたのです。参議院選挙等を控え民主制の欠点を露呈せぬよう、責任者は正確な発言を、私達は投稿内容を検証する良識を持ちたいものです。
6月4日(水)8:00PM、BSフジ・プライムニュースに出演します。