家族の為に懸命に働き、子供が独立した退職後の老夫婦にとり、年金は生活を支える拠りどころです。国会提出の年金改革法案の骨子は、①厚生年金加入要件の年収106万円以上の緩和、②働く高齢者の厚生年金減額要件を月収62万円に引上げ等です。年金は生存年令が分からない国民が、老後に備える相互扶助の積立て制度です。㋑平均寿命、㋺将来の加入者・受給者数、㋩保険料額、㋥保険料積立金の運用利回り等の予測を前提に、給付額が確率計算されます。それだけに参議院選挙を控え、国会では票目当ての耳障りのいい議論ではなく、制度が将来とも機能する、つじつまの合った審議を期待します。
年金は全国民が対象の基礎年金、被雇用者が対象の厚生年金・公務員等の共済年金に分れます。①基礎年金は月額19,500円の保険料を40年間納めると、65歳から月69,308円を受給。10年以上納めると、納付額に応じた月額の受給資格が生じます。納付保険料負担軽減の為、給付額の半額は公費(消費税収)で賄われます。基礎年金支給額は年30兆円で、公費負担は15兆円です。自然増収が減税財源ではとの質問がありますが、高齢化で毎年の受給者が増えるので、自然増収はその財源等に充てられてしまいます。厚生・共済年金は、年間給与・賞与の18.3%(労使折半で本人は9.15%)を40年間納めると、40年間の平均報酬の約60%を65歳から受給。40年間の月平均報酬(給与・賞与)が46万円なら受給額は23万円。厚生・共済年金総額は基礎年金と報酬比例部分の合計で、基礎年金部分には、50%相当の消費税収が充てられます。日本の年金総額は次のとおりです。
◎給付総額62兆円=保険料47兆円+消費税収15兆円
今回の法案について、年間報酬の低い就職氷河期の人達を見据え、基礎年金69,308円の底上げを行うが、その財源をどうするかにつき、与党と立憲民主党の間で、「必要に応じて対応する」趣旨の合意が成立しています。給付額引上げには、保険料の引上げか公費投入額増が必要なのは、計算上自明のことです。しかし保険料は税と同じ国民負担であり、公費の財源である消費税率引上げや赤字国債増発も難しいので、将来の厚生年金支給に備えている積立金を充てる案が考えられているとか。厚生年金の現受給者は、比例報酬部分が減っても基礎年金部分が底上げされるので結果的に支給総額がどうなるか。だが将来の受給者は、支給原資となる運用資金が減る可能性があります。加えて底上げ分の1/2の公費負担をどう賄うか。参議院選挙を控え、現在の有権者に阿る結果にならぬよう、立憲民主党に期待したいと思います。