週刊いぶき

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6月23日

カナダのG7サミットでは、自由貿易の確認やトランプ関税について進展はなかったようです。サミットでの石破トランプ会談で結着との、参議院選挙向けのサプライズを期待する声もありましたが、交渉は継続です。対米輸入や投資の拡大を材料に、日本は自動車等の関税撤廃交渉をしているのですが、米側の態度は固いとか。石破さんは「国益を損ってまで結論を急ぐ気持ちはない」と。トランプ関税の米国内への悪影響、中東への介入、一年半後の中間選挙を考えると、時間とともに交渉の土壌は米国に不利になるのでは。石破発言その言や良し。ブレずに頑張ってほしいと思います。

再三この欄で述べましたが、米輸入品は関税分10%の価格上昇。加えて大幅な所得減税による財政赤字を懸念する米国債価格の低落(長期金利上昇)。経済の先行き不安によるドル安。対円レートでは、トランプ大統領就任時の1ドル160円が、現在140円強のドル安です。関税10%、ドル安で12%、輸入消費材と原材料は計20%以上の高騰です。困るのは消費者物価上昇(インフレ)と原材料高に直面する米国民と製造業者です。加えて長期金利上昇は設備投資欲を抑えるので、消費と投資は予断を許さず、今後の米国経済が心配との見立ては、米エコノミストや金融界に共通しています。

政治的難問もトランプ政権を待っています。米国は2年ごとに中間選挙があり、下院と上院の半数が改選です。中間選挙では大統領与党(今回は共和党)が議席を減すことが多く、今後は日々の暮しも難しくなるでしょう。政権維持の為「トランプ大統領は大転換するかもしれない」との第一次トランプ政権の高官の見立ても、的はずれではないとも思えてきます。日米貿易協定違反の関税ディール、イランへの介入を平然と仕掛けるトランプ流は予断を許せませんが、慎重に落ち着いて国益第一の姿勢がブレないようにと思います。

もう60年近く前になりますが、英国に赴任する私に先輩が教えて頂いたのは、①相手の地位、立場に敬意を払うこと。②だが如何なる相手でも、日本が不利になる卑屈な態度を見せぬこと。③握手は相手と目を合せ、頭を下げぬことでした。以後、内外の交渉で大切にしてきた教えです。大統領の国家元首、三権の長の一つという地位に敬意を払いつつ、日本国民の国益を背負っている矜持を持って、交渉してほしいと期待しています。