高市早苗さんが自民党総裁に決りました。石破総裁の下での選挙で衆参とも自公過半数割れとなっており、高市さんが即総理大臣に指名される保障はありません。参議院敗北後50日間のゴタゴタ、総裁選の30日間、連立か部分協力か現在の無政府状態から抜け出す目途のたつまでの日数、この3ヶ月の政治空白を創った責任の多くは自民党にあることを謙虚に自覚し、新総裁には党務に当たってほしいと思います。政権安定だけの連立は避けるべきで、結局首班指名は衆議院規則18条の決選投票ではないでしょうか。その場合高市新総理の立場は部分協力の石破時代と変らず、無政府状態からの脱出は筋の通った野党・合意に責任を持つ野党との真摯な協議にかかっています。
政党・自民党の総裁と憲法上の総理大臣の地位は明確に別のもので、今回は高市新総裁の自民党再生について考えてみます。昭和30年(1955)の東西冷戦下、左右社会党の合併で日本社会党が誕生したことに危機感を抱き、自由党・民主党が合併し自由民主党が立党。結党の経緯から自民党は非社会・共産主義(反独裁・反統制・生産分配の国家管理に反対の自由と民主制の政党)で、「保守」も「リベラル」も包摂する地域に根を張った国民政党でした。
民主制にはポピュリズム、自由には公益を忘れた自己主張、競争社会や市場経済には勝者の論理や較差・分断等という人間ならではの欠点があります。どうしようもない制度ですが、独裁・統制よりましなこの制度を機能させるべく、人間は「保守」と「リベラル」という自民と民主制を前提とした思想を考えます。人間の知性による法律や制度を通じて欠点を補うリベラル、知性より矜持・伝統的規範即ち理性に期待する保守です。結党以来70年、自民党は保守とリベラルを包含した国民政党で、中選挙区制故に可能だった保守、リベラルの議員の混合政党・国民政党でした。ポピュリズム的保守やリベラルの単一主張の政党の出現で、この左右の翼をもがれたのが衆参選挙惨敗の原因でしょう。
結党以来の歴史を考えると、高市さんが急いで右の翼を使いすぎると、無党派や穏健保守、現役世代や若年層はどう反応するか。参考にすべきは第二次安倍政権です。戦後レジーム脱却や防衛力強化等保守色の強い印象ですが、一方で消費税率引上げ延期、一億総活躍等実はリベラル色の強い政策で国民の日常に向き合い、保守とリベラルの両翼を巧みにあやつり、長期政権を維持した印象です。高市さんが首班指名されたら、総理大臣として期待することは次回以降に述べたいと思います。