週刊いぶき

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10月27日

日本の行政権が漸く動き出し一安心。しかし高市内閣の政権運営環境は、参議院まで過半数割れで石破内閣時より厳しく、自民党議員は緊張感を持って職務に当たってほしいものです。連立工作の過程で、自民党内にあった「総総分離」の主張等は、一政党内の抗争を理由に解散総選挙等の妄言とも相通ずる立憲政治の本質を理解しない主張で、今こそ一致結束の時です。

今回は、高市内閣がどのような日本を目指し、その為に何をなすべきかを考えてみます。理想の国の姿は各々の価値観で違ってきます。現実を受入れ、助け合って穏やかに暮すブータンは世界で最も幸せな国とも言われます。美しい自然と永世中立宣言のスイスこそ日本の理想と戦後日本で言われた時もありました。だが政治は現実を受入れ、理想に向けて一歩ずつ進む忍耐の作業です。多様な価値観を主張できるようになった現在の日本には様々な意見があります。その国民の日常を支えるのは世界4位の経済です。多くの国と経済・人的交流も出来上がっています。安全保障面でも対象国と同盟国が存在します。

この現実のなかで、米国や各国に日本の国益を受入れさせる外交交渉力の再生こそが日本の長期的国創りの目標でしょう。外交交渉力は多様で、文化力や地政学上の位置までありますが、現実に大きいのは軍事力と経済力。現憲法と80年前の戦争への国民感情から、核装備は勿論軍事力を外交交渉力にまで高めることは現実的でなく、米国等の軍事力による交渉力を削ぐ為に自国防衛力を高めるのが限度となると、目指すべきは1ドル70円でも競争力があった、かつての活力ある経済の再生こそでは。かつて強い日本経済に悲鳴をあげた米国等が、①輸出の自主規制、②円レートの切り上げ、③国際的役割の分担を日本に要望(圧力)し、それに如何に応えるかが日本の強み・交渉力でした。

日本の経済力の低迷は何故か。日経新聞の経済教室によれば、高度成長期の労働生産性は世界でも著しく高く、その後徐々に低下し、現在では効率的国内投資残高が少なく、労働力の質的低下が顕著としています。労働生産性の再生は、㋑海外でなく国内への戦略産業投資の促進、㋺それを支える技術開発への注力、㋩一番大切なのは国民の勤労意欲の覚醒、㋥その為にも、働き努力すれば明るい希望が持てる政策インフラ(税制等)の整備が求められます。

荀子は今様に言えば、「政治は舟、国民は水、水舟を載せ、水舟を覆す」と述べています。政治は条件を創れても、自由社会では国民が動かねば国・社会は動きません。高市さんが尊敬するサッチャー元英首相が、「英国の栄光を取戻すため一緒に立ち上がってください」と呼びかけたのはそれ故です。