公明党の連立離脱から自民・維新の閣外連立合意、高市内閣発足までの約10日間は、各党の思惑や各政治家の人間像が伺えた期間でした。自民党高市内閣には、参議院選挙後の50日の党内ゴタゴタ、総裁選の30日間、首班指名までの2週間の計3ヶ月に及ぶ政治空白の国民への責任を自覚し、行政機能の迅速な回復に努めてほしいと思います。
維新吉村共同代表の度々のメディア発言から、自維閣外連立の成立は吉村さんの熱意と決断の結果だと思いました。だれが行政権の責任者が分からない部分協力体制に終止符を打てる可能性があり良かったと思う一方、国会議員でない吉村さんの決断で、三権の一つ国の行政権の構成や合意内容に記された国の政策の方向が決ることに、国民主権を直接預る唯一の国家機関・憲法にいう「国権の最高機関」である国会の議長を経験した私は、憲法法理上の違和感を感じました。首都の危機管理機能のバックアップは大切な論点だけに、吉村さんの名誉の為にも、憲法上の国会議員の役割と権威の為にも、所謂副首都の対象は白紙で議論する政治的矜持を各党の衆参議員に期待します。
維新が閣内に入らず、閣外連立を選んだのは高市さんには残念だったでしょうが、維新にとっては一呼吸置く賢明な選択と思いました。憲法は行政権限を法理上は総理大臣に与えず、内閣に委ねています。その趣旨は、総理大臣は国民(主権者)から直接選ばれる大統領でなく、主権を委ねられた国会から指名を受け、行政権を付与さる議院内閣制の長と位置付けているからです。従って行政権限の行使には閣議決定が必要で、閣内連立の場合の維新の国務大臣は閣議決定に署名が求められ、高市内閣の全行政行為への共同責任を負うことになります。維新創設者の橋下さんがいみじくも言っていたように、急な結婚には婚約期間が必要だということでしょう。
自民・維新の連立合意書を一読した印象は、国会(他の党派)に配慮する表現が少し足りないのではと思いました。合意書の内容は、①行政行為として出来るもの、②自民維新で準備協議し、法案・予算案等として国会の承認を要するものの2つがあります。②は国会の審議議決を要するので、自民・維新の閣外連立内閣が少数与党であることを考えれば、なおさら表現に今すこし謙虚さがほしかったと思うのは私だけでしょうか。特に議会制民主制の基盤をなす選挙制度、議員定数削減や政治資金の在り方は、衆参両院議長を通じて各党各会派で話し合い、迅速にしかし手順を踏んで結論を得るものです。間接民主制の原点は国会にあることを大切に、今後の行政を進めてほしいと願っています。