20日にトランプ米大統領が正式に就任し、世界はその言動に不安を抱えつつ注目しています。東西冷戦終結時に比べ衰えたとはいえ、米国は今も世界一の経済大国・軍事大国です。日本にとっては経済的結びつきの深い国だけでなく、世界経済が米ドルを中心に回っており、トランプ経済政策の影響は大きいのです。最重要なのは、緊張の高まる東アジアでの日本の安全保障が、日米安保条約と米国の核の傘抜きには考えられない現実です。
戦後80年、あの戦争の悲惨さ、戦後の荒廃と飢え、復興の苦しみを体験していない世代には、今の平和な日常はあたり前で、ウクライナやガザの現実は他国のことかも分りませんが、日本の平和な日常、主権と領土の維持は、自衛隊も含めた日米の集団安全保障・日米同盟による現実は認めねばなりません。この同盟は太平洋での米権益の為でもあるのですが、同盟維持の為日本は多くの財政負担や我慢をし、特に高度成長期には通商分野で譲歩を重ねてきました。アメリカ・ファーストのトランプ政権の出方次第で、日米の集団安全保障の現状について、日本は難しい判断・理解を国民に問いかけなくてはならなくなるかも分りません。
軍事面での日本の安全保障の対象は、領土や主権に現実に脅威を与え、国家統治の基本が違う中国・ロシア、北朝鮮なのはだれも否定はしません。だが、軍事・経済両面で日本運営の最大の安全保障対象国は米国で、この必要不可欠の同盟国に日本の不利益になる行動を取らせない手だての準備を怠らぬことです。新年2回に分けて述べた「初夢」の実現こそがその鍵です。トランプ政権の4年間に「初夢」の完成、実現は難しいでしょう。しかしトランプ大統領の言動・姿勢が特異、例外的なものではありません。最重要同盟国・米国の建国以来の歴史を振り返れば、あの国の底にあるものが、民主制の肝である投票を通じ吹き出すことへの備えは怠ってはならないのです。
終戦後に勝者の視点で語られる米国史に触れた私達は、米国は自由、平等な競争、努力により夢を実現できる国と教えられてきました。しかし現実には多くの差別、較差があります。移民による人工国家であるだけに、土地を奪われた原住民、奴隷であった黒人、労働力として移入されたアジア系の人達に対し、最初に移住したWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)、遅れて渡ってきたローマン系やアイルランドのカトリックの人達が、既得権を巡って相互に、あるいは遅れて来た人達に対し抱く感情は、選挙の集票へのポピュリズム的訴えの対象となって吹き出るのです。