4月からの新年度予算案は、高校無償化等の予算修正合意が整った維新の賛成で衆議院を通過し、年度内に成立のようです。4月から地方自治体等への予算配分が可能となり、国民生活への支障は避けられそうです。予算案は政権与党の政策の金銭表示なので、不成立は内閣不信任、遅延は内閣の不手際という政治的意味を持つ為、少数与党は賛成取り付けに懸命でした。
議長を経験した私は、この事態は一方で、国会が本来の機能、権威を取り戻せるとの期待もしていました。従来の予算審議は野党の一方的批判、与党の多数による原案採決の通過儀礼との批判を免れないものでした。批判の回避には、①与野党共に異なる意見に耳を傾ける謙虚な姿勢、②政権維持の為と後世の指弾を受けぬ与党の筋の通った協議、③野党による自分達の考える無駄の指摘、その財源を使った自分達の政策提示で、それを欠いては集票を意識した目先の人気取りの提案合戦に陥ります。
「公平」や「無駄」とは何かは、個々人の立場や価値観で違います。「防衛費は無駄で福祉予算こそ大切」との考えもあれば、日本の安全保障環境を考えれば「憲法の範囲内で防衛費は増額を」との主張も。「高所得者や法人課税の強化が公平」の一方で、「自助・努力・創意工夫への課税は不公平」で社会の活力・発展を阻害するとの反対論も。だからこそ理念の違う政党があり、民主制の国では投票と多数決で国や自治体の運営方針が決ります。与党案に対する自党の考える無駄を示し、自党の考える公平な施策を示してこそ国民には政策の違いを理解してもらえるのです。維新と合意した高校無償化も7年度の財源は単発で準備できても、8年以降の目途はたっておらず、赤字国債(高校生が納税者になった時の負担)にならぬように願っています。政党の理念による負担の違い、施策の財源を示さぬ姿勢では本当の政策論争にはならないのです。
経済が順調なら毎年度税収は増えますが、毎年度義務的支出もまた増えます。平成7年度の税収見込みは78兆円、増収は約9兆円。地方自治体の行政サービスへの交付金増1.3兆円、過去の行政サービスを借金に頼った国債の利払い等の増1.2兆円、高齢人口増に伴なう基礎年金給付の1/2負担増等0.6兆円、防衛費増0.8兆円等々。不確定な自然増収は制度として決っている支出増の財源となるので、新たな減税や無償化の主張には永続する安定財源(予算の削減か負担増)が必要で、その議論を欠く修正劇は残念に思いました。