コラム

週刊いぶき

3月24日

お彼岸に両親や祖先の墓参りをしました。墓苑内は舗装されておらず、雨でぬかるんだ泥が靴に残ります。子供の頃当り前だったぬかるみと共に、戦中・戦後の困難な時代に苦労して育ててくれた父母のことが、感謝と共に思い出されました。
      春泥も  なぜか嬉しき  墓参り
白い御飯一杯が夢に出て来た戦中と戦後の一時期まで、生家の前の道路脇には食糧の足しにと細々とさつま芋が植えられていました。道路の側溝に生活排水が流れ、蚊が舞い鼠がチョロチョロしていました。戦後復興が高度経済成長に移る60年前頃から、日本は劇的に変ります。公団住宅、電化製品、マイカー。そして今では当たり前で時には不充分と不満の対象になる、皆年金、皆保険、介護保険制度が導入されます。新幹線や高速道路が出来る頃には、道路は舗装され、下水道整備と共に側溝もぬかるみも姿を消しました。
私達の日常も助け合わねば生きていけなかった時代から、一人でも生きていける時代へと変ります。素晴しいことである一方、家族・地域社会、勤務先等への帰属意識は薄れ、自分の価値観、自己主張を最優先にできる時代にもなります。現在議論されている結婚後も旧姓を維持する選択的夫婦別姓の主張も、この流れのなかにあるのでしょうか。価値観の問題なので、異なる意見・主張を居丈高に批判するのはでなく、冷静な話合い・協議が必要でしょう。
民法や戸籍法では、結婚に伴ない夫婦はどちらかの姓を選択するのが現制度です。結婚前に積み上げた実績を改姓で失なう不利益があるなら、不利益解消の努力と①なお何が足りないのかを詰めるべきです。戸籍法に従うと自己の存在が失なわれるとの主張なら、②同一戸籍で別姓なのか、戸籍まで別との主張かを整理すべきです。③夫婦は姓の選択が可能でも、どちらの姓を選ぶかの子供の権利はどうなるのか等々も配慮が必要です。
特に②で戸籍まで別との主張は、法的婚姻以外の男女関係との区分が難しく、相続・税務・社会保障等の前提になっている現在の考え方が適用できないように思えます。選択的夫婦別姓の議論は憲法13条(個人の尊重)、14条(法の下の平等)と併せて、12条(公共の福祉内での権利の主張・濫用の禁止)も前提に熟議すべきでしょう。祖先や父母に感謝し、○○家の墓に詣る人が50年後には何人いるのかな等と考え、墓参りから帰路につきました。
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新年早々に後藤剛さんのご示唆も頂いたので、ホームページを更新しました。http://ibuki-bunmei.org/。覗いて頂ければ幸甚です。