週刊いぶき

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総選挙も中盤、各地に応援に伺うと自公対野党の構図が変り、日本社会の価値観の分散による多党化もあって、選挙戦に当惑いがあるようです。首長選挙は自公協力、総選挙は「中道」の立憲・公明対自民も。連立合意した自民・維新の小選挙区での激突も。多党化の評価は人それぞれとしても、単独過半数を制する政党が出ない場合、閣内外協力であれ、野党としての協力であれ、有権者受けの良い提案を協力条件とし、その為の財源や法案処理に責任を持たない食い逃げ政党のある限り、安定した筋の通った政治は難しいでしょう。「政治の安定」を今一度皆で吟味し、一票を行使すべきと考える昨今です。

選挙の論戦を聞いていて、私には理解できないことを二つ。①維新の吉村大阪府知事の辞職のニュースを聞いた時、吉村さんが総選挙に出馬し、いよいよ国会議員として国政に関与するのかと一瞬期待しました。だが知事選のやりなおしと知りガッカリ。日本国憲法は、「主権の存する国民の投票で国会議員を選び」、「国政の権力は国民の代表がこれを行使し」としています。国政の三権の一つである行政権の在り方、国権の最高機関の国会議員定数について、大阪府民が選んだ自治体の首長が影響力を行使するのは、国会の権威、憲法の法理から如何かと議長経験者としては考えていました。維新の松井前代表の言葉を借りれば、「再選されても大阪都構想の民意の確認にはならない」のでは。二度の住民投票で否決され、今回再選されても残存期間終了後また知事選挙、大阪都移行には三度目の住民投票です。議員定数減を主張する維新には、三度の選挙費用の負担を考えると、知事権限濫用の自制を求めたいと思います。

②「中道」だけでなく、維新と公約をそろえる為か自民党も食料品消費税率の2年間ゼロの検討加速化の公約。消費税収年27兆円は法律により全額が39兆円の社会保障財源となり、基礎年金給付の半分、高額医療費の補填、長寿者医療制度の保険料抑制等に充てられています。食料品の消費税収は約5兆円で、この穴埋めがないと社会保障は頓挫します。「中道」のような基金の運用益構想では毎年度5兆円の確定財源にならず、赤字国債増発になりそうです。さて自民・維新はどうするのか。国債増発・国債価格低落・長期金利上昇・円安加速・輸入品価格上昇・消費者物価上昇で消費税引下げ分等吹っ飛ぶのでは。消費税導入、3%から5%引き上げで内閣総辞職した竹下さんや橋本さん、税と社会保障一体改革で10%の道筋を付けた「中道」の野田さん、心ならずも10%を実現した安倍さんは、目先の集票目当ての消費税減公約のオンパレードをどう見えているのでしょう。

突然の衆議院解散・総選挙で議員は選挙区に戻り、永田町は閑散としています。通常国会冒頭解散は過去にも例はありますが、衆参両院で与党が過半数割れ等不安定な政情での解散は初めてで、高市自民党は多党化による不安定な現状打開という難しい賭けに出たと言えます。通常国会は4月から始まる新年度予算案・予算関連法案をまず審議するのが通例で、選挙の為に審議は大幅に遅れるので、地方自治体への予算配分・高校無償化・所謂178万円の壁の所得減税の実施等が遅れ、有権者の判断が注目です。安定多数による着実な政策遂行か、国民の価値観多様化を反映した安定過半数なき連立の継続か。

メディアは①高市総理の解散表明はいつか、②選挙は内閣でなく政党で闘うのに、自民党幹部に高市総裁から相談・連絡がなかった、③野党は国民生活、物価高対策置き去り解散と批判等々と報道。これ等は総選挙の帰趨を占う大切な点ですが、各メディアには、憲法の法理から衆議院解散の意味、解散理由が党利党略でなく正統と認められるか等についての社説・論説が少ないのは、社会の木鐸として物足りない印象です。議院内閣制の憲法下で、党首として総選挙を経験していない高市さんが、「私で良いのですか」と主権者に問うのは、解散のタイミングはともかく、憲法上の唯一の正当な解散理由かと考えます。

憲法は国の事ごとを決める「主権」を国民に賦与し、国民の権力はその代表者が行使するとして、国会を国権の最高機関としています。国会は総理大臣を指名し、内閣に行政権を委ねます。国会と内閣の意見が違った場合(69条の内閣不信任)、主権者の意思を伺う解散・総選挙が明記されています。一方、憲法7条の天皇の国事行為として、「内閣の助言と承認により、国会を解散すること」があります。憲法7条が解散の手続きを記したのか、内閣の権限を記したのかは、国会の権威、三権分立の意義・党利私略解散の阻止の点から永年論争の的でした。ただ事実の積み重ねとして7条解散が定着しており、党利私略の解散権行使を我慢するのは内閣の良識に懸かっていると言えます。

各大臣が「解散は総理の専権事項」と答えるのも憲法知らずで、憲法7条は「総理大臣の」ではなく、「内閣の助言と承認により」と記しています。模範応答は「内閣の助言云々なので、国務大臣として責任を逃れるものではありませんが、任命権者の総理の意向に従うつもりです」でしょう。高市さんには解散について、閣僚は勿論、選挙の実務を担う党幹部と充分な意思疎通のうえ、主権者の理解と協力への努力を重ね、強い経済の再生を期待します。

私が初めて国会に議席を得たのは40年前で、当時の日本は上昇気運に溢れ、この状態が続くとの奇妙な安心感、うぬぼれがありました。当時の日本の労働生産性(時間当りの付加価値生産力)は米国等を上回り、日本の対外競争力は群を抜いていました。戦勝国の欧米諸国は、豊かさのなかの価値感の多様化故に労働生産性が低下し、貿易赤字に苦しんでいました。貿易黒字国の日本には、円高レートへの誘導、輸出自主規制、外国製品の輸入促進、国際的役割分担等の外圧があり、それをあやし、応えることが日本の外交交渉力でした。

戦後80年のなかで、あの時代の日本は最も輝いていて、高市さんが再生したい「世界のどまんなかで花開く日本」の時代でした。日本の歴史は今後も紡がれるのですが、戦後80年の近現代史では、その後のバブル崩壊、失われた40年、そして現在と、日本は「繁栄した国は多いが、繁栄し続けた国はない」との歴史の轍を踏んでいるのではないかと憂慮されます。この歴史の必然から抜け出すには、政治家は勿論、それぞれの立場の国民の覚醒を待たねばならないのは、ローマ帝国の興亡を描いた塩野七生さんの「ローマ人の物語」を読むと良く分かります。

高度成長の果実で、今を生きる私達は皆保険制度、教育無償化、週休5日制や働き方改革、高速道路や新幹線等を、生まれたときにあった当然のものとして享受しています。内閣府の調査では、「現在の生活に満足、おおむね満足」が6割弱とか。一方で国際化が進み、文化の違う国々の価値観に触れ、それを自由に主張し、実践できる日本になっています。衣食住の向上というかつての国民共通の目標等は過去のもの、多様な価値観を主張しても1人で生きていける有難い(?)日本では、家族・地域社会・企業・国への帰属意識が年々希薄になっています。その現状への評価は人それぞれですが、労働生産性の低下、社会の分断、少子化等の先進国病は日本にも例外なく取りついているようです。

先輩世代が残してくれた皆保険保険制度は少子高齢化で収入と支出が合わなくなっている。耐用年数に達した上下水道や橋梁事故のニュースも後をたちません。有形無形の公共インフラの修復・保全は、行政何より政治の責任でしょう。それを可能にする日本の労働生産性再生の為、経営者には賃上げと下請けへの配慮・有効な国内設備投資、国民には勤勉な労働の覚醒を求める前提条件は、目先の集票の為の減税と給付を大合唱する与野党政治家の覚醒では。

新年おめでとうございます。今年もご一緒に学ばせて頂きますので、宜しくお願い致します。歳替り 変らぬものを 極めたし。

今年は戦後80年、終戦の年に生まれた方が80歳ですから、戦争の悲惨さを実体験している世界のリーダーはいません。トランプ、プーチン、習近平等々。戦後の飢え、劣悪な生活環境、街を闊歩する占領軍兵士、そんななか家族を養う為必死に働いた私達の祖父母や父母の世代も皆故人となりました。この世代の頑張りで日本の労働生産性が向上し、戦後復興・高度成長の道を歩むのです。現在では当り前で不満の的にもなる医療保険制度、教育無償化、上下水道等の社会インフラ、土曜休日・働き方改革等は皆その果実です。

日本が生きていく国際環境も変貌しつつあります。第二次世界大戦の損害の大きさへの反省から、人類は国連中心の世界秩序、経済面ではGATT(現在のWTO)とIMFを基軸とした自由貿易体制を創りあげました。第二次世界大戦で唯一戦場にならなかった米国は、圧倒的な経済力と軍事力でこの体制の盟主であり、ソ連を中心とする社会主義、統制と独裁の東側諸国との東西冷戦での自由と民主制の西側の盟主として、冷戦の勝者でもありました。

戦後80年、戦争や戦後の荒廃を知らず、現在の平和と日常を当り前と思う人口が大部分になると、国際秩序も日本社会の価値観も大きく変ってきます。国際社会や日本社会はどう変りつつあるのか、それにどう対処するのか、今回は国際社会の秩序、次回は日本社会の在り方について、①戦争体験の風化、②豊かさのなかでの帰属意識の喪失をキーワードに見てみましょう。

戦後の国際秩序は、各々の国益を認めつつも地球人としての帰属意識、協調と自由競争という矛盾した価値観に支えられていました。この矛盾を表面化させなかったのは、実質的に唯一の戦勝国・米国の経済力や軍事力でした。だが、その米国がベネズエラの独裁者を軍事力で拘束し、石油利権を公然と主張する現実は、米・中・ロの軍事力優先の第二次大戦前の体制に戻った印象です。

戦後の国際秩序の恩恵を最初に受けたのは日本と西独で、戦後復興と繁栄の歴史を刻むことになります。そして現在その恩恵を受けているのは中国でしょう。豊かさのなかでの米国民の油断なのか、官民一体で労働生産性を向上させた国々の勝利なのか。背に腹かえられぬ米国は、自由な競争による国際協調から自国第一主義に舵を切ります。他国の安全保障には距離を置き、自国産業強化に乗り出し、各国にもその風潮が蔓延しています。日本国民がこの変化にどう覚醒するか。後世の歴史家が評価する年になりそうです。

臨時国会は先週で閉会しました。①維新との閣外連立による政策調整の当惑い、②衆議院で辛うじて過半数の連立となっても、参議院は少数なので野党への配慮、③高市官邸からの注文が多い等々、事務所を訪ねてくれる現役の皆さんの話では、税制改正・予算編成に手間取っているようです。例年なら当欄で、来年度予算案や税制改正案が暮しや今後の日本に与える影響につき私見を述べていたのですが、全体像が不透明なので来年に先送りします。多党化による国家意思決定の遅れを、①多様な意見の反映とみるか、②斉合性と迅速性を欠くとみるか、次回総選挙での国民の判断を待たねばなりません。

この一年、政治理念や政治の現状、私達の暮しや経済を学んできましたので、今回は私の年末について、「古い奴だとお思いでしょうが」、豊かさと便利さのなかで失いつつある大切なもの、保守理念の肝のようなものにつき私見を述べ、皆さんのお考えも伺いたいと思います。私は長男、妻は三人姉妹の長女で、各々の「家」の墓所と仏壇を委ねられています。私の実家は京都、妻は東京なので、年末も変わらず京都と東京を往復する毎年です。

年末の数日、京都ではお世話になった故人のお参りの後、伊吹家の墓所を掃除し樒を供えます。仏壇の燈明を整え仏花を供えると、祖父母や両親との事ごとが甦ります。「分を弁える」との我家の家訓の為か、外食や出前をとった記憶は少ないのですが、食糧の乏しかった戦中戦後も当時としては精一杯の食事(今では貧弱なものですが)であったこと等、亡き父母の苦労に感謝です。衣類も母のお手製で、今も手編みセーターを大切にしています。機械編み大量生産の現在では、逆に贅沢に見えるのも時代の変化でしょう。「世間様に顔向けできぬことだけはするな」の祖父の口癖が、保守の伝統的規範と後々で気付くのですが、核家族の現在では、教えてくれる祖父母との会話も限られますね。

年末の最後の3日は東京で、小さな門松を立て、仏壇を清め、その後の「お煮め」作りが私の役割です。昔ながらの里芋、蓮根、人参、しいたけ、焼豆腐、あげ、こんにゃくを、各々別々に昆布、鰹節、酒塩の出汁で煮上げます。これと数の子、ごまめ、黒豆、たたきごぼうとお雑煮が昔から変らぬ我家のお正月の食卓です。昔はなかったローストビーフ等を予め詰込み、冷凍・解凍で宅配する高価なおせち等とは違う、お金をかけず手間をかけ、お金を使わず気を遣う、手造りの我家のおせちです。

今年は今回で終了し、来年は12日からご一緒に学ばせて頂きます。良いお年をお迎えください。1月6日 BSフジプライムニュースに出演します。

国会では先週ご一緒に学んだ補正予算案の審議が進み、政府部内では来年度税制改正・予算編成作業が大詰めです。補正予算規模約18兆円の内、強い日本経済再生の高市構想の支出は6兆円強。一方物価対策等当面の国民への痛み止めが9兆円。これ等を賄う財源は税収の見込み増等では追いつかず、約12兆円の国債を増発。積極財政論者は、将来投資の為の国債増発は将来税収増として戻ってくると説きますが、高市経済再生支出6兆円を上回る国債発行は将来投資でなく、今に生きる私達が使う痛み止めの財源になっています。

「世界で存在感ある日本」再生の為に必要な外交交渉力となる「強い日本経済の再生」との高市構想は私も全く同感です。その為にはご一緒に学んだように、①経営者の国内設備投資意欲、賃上げや下請けへの配慮、②国民の勤労意欲向上の二つで日本の労働生産性を向上させねばなりません。この関所を超えるには、数年を要すると考えるのが常識でしょう。その間、積極財政に「責任ある」姿勢を示し、国民に説明を盡し、市場と我慢強く向き合わないと、①国債増発が国債価格低下、②長期金利上昇(民間設備投資・住宅建設に負の影響)、③円レート下落(円安による物価高)を招来することになります。選挙を前提とする日本の民主制の下で、国民が日本経済復活の為、どこまでこの物価高等に耐えて頂けるか。高市さんが尊敬するサッチャー英首相のように、高市さんの国民への覚醒と我慢と努力の呼びかけが心に響くか。

以上を前提に、補正案編成過程で気付いた点を述べます。①経済財政諮問会議、成長戦略会議の一部委員から、「前年度補正を上回る規模を」との意見があったとか。予算特に補正予算は、財政法により「必要最小限のもので編成し、国民負担と市場への悪影響を抑えねばならぬ」はずです。高市さんには、アベノミクスの指南役だったイェール大学の浜田先生の現状認識を聞く等異なる意見にも耳を傾けることを推めたいと思います。

②次に来年1月から3月までのガソリン減税等の減収分は、税収の上振れ分と相殺され歳入に計上されています。その減収分の代替財源は補正予算では放置され、結果として国債で賄れています。減税に賛成した与野党は、約束どおり代替財源を確定しないと、更なる円安、物価高のつけこむ余地を残すことになるのを怖れます。

③石破内閣の当初予算の予備費を国会決議で減額したのが、補正予算で7千億円復活した経緯を国会軽視の謗りを受けぬ説明も必要がなりそうです。当突に出てきた所得制限なしの子供手当2万円給付と併せ、枠の拡大の為ではないとの市場への説明が望まれます。

政権発足後、外交案件や国会対応の続いた高市内閣は、先月21日に総合経済対策を閣議決定。その具体化の補正予算案の国会審議が始まります。補正予算案には、2週に亙り学んだ高市さんの「責任ある積極財政」の一部が顔を見せています。高市さんが越えねばならぬ関所は、①財政の誘導に経営者が応え、国内設備投資を行うか。②国民が勤勉な労働力で応えてくれるか。③①②が実現し、労働生産性向上と名目・実質経済の成長の結果、税収増が確保されるか。④その税収増で積極財政の為の国債増発の償還「責任」を課せるか等々です。
補正予算案の内容です。約18兆円の歳出とそれを賄う歳入(財源)が国民生活にどう影響するか。国民の当面の痛み止めである物価対策は9兆円ですが、高市さんが目指す日本経済の健康体回復の経済成長投資は6兆円、防衛力強化は2兆円です。高市カラーによる財政支出が、「責任ある」積極財政とのバランスで、どう姿を現すかは来年度予算案に持ち越された印象です。
①物価高対策は、地方自治体の判断で食料品の価格高騰対策や中小企業支援に使える交付金や地方交付税が3兆円、医療や介護を国民に提供する医療・介護施設の賃上げ支援等1兆4千億円、中小企業支援は8千億円等の9兆円です。②日本経済の再生、供給力強化の為、半導体、創薬、造船等の所謂17分野の産業の梃子入れ支出は一般会計と特別会計合わせて約7兆円です。
世界の市場が注目しているのは、「経済再生」の支出をどのような財源で賄うかです。今回の補正予算では、①1月から3月までのガソリン税減税の税収減を差し引いた後の税収の上振れ3兆円。②昨年度予算の使い残し3兆円。③税以外の収入増1兆円、④令和7年度で不用になる1兆円を前提に、不足分を昨年度の補正予算に比べ6兆円増の12兆円弱を国債で賄いました。これに対し市場は、来年度予算でも国債増発を予測してか、国債価格下落(長期金利上昇)と円ドルレートの155円の低落で反応しています。
補正予算の半分を費いやした物価対策に対し、円安は逆に輸入品(原油や農産食料品)の値段を押し上げます。高市さんの日本経済再生案が成功すれば、日本経済の競争力は向上、円レートもかつての1ドル100円が現実になりますが、その実現には2~3年はかかるでしょう。その間の円安・物価上昇を抑えるには、①財政や税優遇の無駄を省き財源を創り、国債発行額を極力抑える。②金融政策は日銀判断を尊重し、公定歩合の機動的調整を委ねる等の「責任」ある積極財政を望みたいと思います。

先週の続きです。外交交渉力となる「強い経済」とは。生活実感としては、㋑明日の暮しが期待できる、㋺社会に活力や明るさがあり、国民に働く意欲が溢れている日本。経済学で言えば、㋑実質経済成長率が高く、㋺労働生産性(賃金あたりの生産付加価値)が他国より高く、㋩1ドル100円でも輸出競争力があり、貿易収支が黒字の日本でしょうか。

生活環境や国民の価値観が変化しているので、過去の回顧は慎重であるべきですが、高度成長期の日本は㋑㋺の条件を充てていました。現在は社会保障等の公的インフラが向上し、国際化が進み異なる価値観に触れ、それを自由に主張できるので、高度成長期のような㋑㋺の再生は主役が人間であるが故に難しい作業です。だが日本の今と未来の為に拓くべき道でもあります。

労働生産性の回復は、日本ならではの技術の開発とその①産業化の設備投資と②勤勉な労働力の組み合せで生まれます。高度成長期のトランジスターや家電、現在の半導体や自動車です。高度成長期に比べ現在の日本は有効な国内設備投資残高が減少し、労働の質的劣化が著しいと経済分析は指摘します。高市さんが「責任ある積極財政」で目指すのは、17の産業分野への公的助成(補助金、税制、直接投資等)で新しい設備投資対象に勢いをつけ、経済を成長させ税収増を期待し、国民生活に還元する一方で、公約助成の財源(国債)の返済「責任」を果す構想です。アベノミクスでは期待した三本目の矢・民間設備投資が活発化せず、好循環が生じなかった反省を教訓にしたとも言えます。

だが、その成功の為には現実には幾つもの関所があります。①自由市場経済の日本では、設備投資や賃上げ・下請けへの配慮の意思決定権を持つ経営者が思惑通り行動するか。②実質賃金増、育児や介護等の充実等が期待できないと、労働の質的向上を期待される国民が思惑通り働いてくれるか。高市構想が成功すれば、①名目・実質成長率は上昇、②公的借金残高のGDP比は現在の200%より低下、③私達が現在享受する公共サービスの財源を次世代に負担させる国債ではなく私達の税金で賄い、④円レートは100円程度に改善し、原油や食料品の輸入価格は30%低下、消費者物価も下るでしょう。だがこの関所を乗り越えられない時は、①②③④は怖ろしい逆方向に暗転します。

将来に大きな影響を持つ「責任ある」積極財政成功の為には、高市さんには現実の制約を忘れずに、異なる意見にも充分耳を傾け、その時々の状況の点検と柔軟な対応を忘れず、臨機応変に政策を進めるよう期待します。

総理就任後の連続外交日程、本会議や予算委員会質疑を終え、高市さんは漸く補正予算・来年度予算案編成等行政権行使の肝に取組みます。本会議答弁は安全運転でしたが、一問一答の予算委員会では、①台湾有事は日本が集団的自衛権行使の存立危機事態になりうる。②社会保障等の行政サービスを借金ではなく税収で賄える状態に回復する目標(PB)年度を単年度とせず、複数年度で考える等従来と違う高市カラー(本音)も。

本音を封印(?)し、官僚作成答弁の多かった従来の首相答弁に比べ、自分の考えでの高市答弁の評価は人それぞれの現状認識や政治信条により違うのですが、行政権を預る内閣の長としての高市さんには、現実の制約のなかで現実を混乱させず一歩ずつ行政を進めていく政権担当能力を期待します。野党が①集団的自衛権行使のパートナーとなる米国の対応が決まっていないが、②複数年度とは何年度か、そのうち1年度のバランスで良いのか、合計してバランスするということか等々、二の矢の追及をすれば答弁はどうでしょう。

世界のなかで存在感ある日本を取戻すとの高市さんの目標は私も全く同感です。どのような道筋でそこに至るかが具体的政策です。国益を護り主張できる対外交渉力強化は、憲法と国民の心情を考えると、軍事力強化には米国の軍事力による対日交渉力を減殺する以上の期待は難しく、また頼るべきでもないでしょう。となると対外交渉力としては、かつての強い経済を取戻すことに行き着くのは、高市さんならずとも当然です。日本の輸出競争力が強いので我々は貿易赤字で大変だ。①繊維、自動車等の輸出規制を、②牛肉等の農産物の輸入促進を、③為替レートの円高要請(スミソニアン協定やプラザ合意)の圧力等々に対処し、これをあやし交渉する立場こそが日本の力の源でした。

この為に安倍さんは、㋑金融緩和㋺財政出動、その結果としての㋩民需(消費・設備投資)拡大の三本の矢の好循環で経済再生を目指すアベノミクスを掲げました。結果は景気に乗数効果をもたらす国内設備投資が伸びず、海外投資や内部留保が膨らんだ結果、給与は上昇せず消費も盛り上がりませんでした。高市さんはアベノミクスの㋩を財政(研究開発、企業補助金と税制)を使い、戦略産業を中心に拡大し、従来の日本経済の競争力、活力を再生しようとしています。この成功の成否は、日本の㋑労働生産性復活の鍵である投資の決定者である経営者、㋺働き手である国民の双方の覚醒、㋩財政支出による経済力向上の成否、結果としての㋥税収増の4つが実現できるかの関門を越えねばなりません。次回は数字でこの関門越えの成否をご一緒に学びましょう。

高市総理の所信表明演説への各党代表質問は抑え気味で、高市さんの答弁も自民・維新連立合意時の高揚感が消え、安全運転でした。衆参過半数割れの下で国会を乗り切らねばならない総理としては、当然の姿勢だと思います。本会議の質疑は、事前通告に対する準備答弁なのでなおさらです。予算委員会の一問一答の応酬が始まると存立危機事態のような高市色の答弁が出てくるので、国民がどう受け止めるか世論の動向は今後の質疑に懸かっています。

高市内閣の支持率が高いので①衆議院解散が早いのではないか。②その場合、公明党の選挙協力なしで自民党は大丈夫か。③維新と選挙協力すれば、大阪等では自民党は崩壊する等のご質問が多くあります。政治は国家と国民の現在と未来を確かなものにする為にありますが、その為には安定した権力が必要です。民主制での権力は多数決で、多数決は選挙に勝つことで得られますから、ご質問はもっともです。勝ち取った権力を国家と国民の為に使うのか、党利・自己目的に使うかを国民が監視し、次の選挙結果が決るのが民主制本来の姿です。

①自民党は参議院選挙後90日の政治空白への責任を自覚すれば、高市内閣は国民の日常を支える補正予算、来年度予算の成立に全力を注ぐべきで、高市さんも「解散の余裕はない」と述べています。来年度予算成立の確定(憲法による自然成立を見込める衆議院議決の3月初旬)までは、高市内閣も自民党も忍耐の期間であるべきです。その後仮に解散になっても、党利党略でなく、党首として総選挙の洗礼を受けていないので、議院内閣制の趣旨から「私が総理でいいのか」との高市内閣の信認を問う解散理由であるべきでしょう。

②公明党は連立の間、政策的には自民党右ばねへの抑制の機能と共に、選挙区調整、選挙協力の役割りがありました。選挙後調査では、公明党支持者の9割から3割、平均6割強が小選挙区の自民党候補者に投票していました。候補者1人の小選挙区制になり、自民党候補者に汗まみれの各種個人後援会結成努力が不充分と感じるのは、私が同志相喰む中選挙区経験者だからでしょうか。自公の協力、相互信頼関係は地方政治を中心にまだまだ残っていますが、自民党候補者にはそれに頼らぬ自助努力こそが望まれます。

③連立は即選挙区調整のようにメディアは報道しますが、比例選挙主体ということもあり外国では連立による選挙協力は例外的です。閣外協力の維新も選挙協力に消極的な印象で、維新との選挙区調整は避け、堂々と民意を争うべきと私は考えますが。