週刊いぶき

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5月12日

連休を利用し、現役議員時代の後援会の方々への挨拶もかね、京都の北山(福井・滋賀県境)に渓流釣りに行きました。京に田舎ありで、5軒ばかりが残る限界集落、初当選の40年前には日常があったのに廃村になったり、時の移ろいを感じます。林業等で生計をたてていた地域は、今では生れた土地への愛着が捨てきれず、年配の方が小さな畑で自給自足です。息子さん家族が訪ねてくるのが何より嬉しいとか。この人達の何気ない山仕事が、森林や都市部の水を護っているのです。
電気は来ていても、ガスはプロパン、水道は簡易水道か谷川から。そんな会話を交していると、基礎年金の底上げ、社会保険料引き下げや103万円の壁、選択的夫婦別姓等は都市住民の話で、ここでは無縁のことだと気づきます。民主制は多数決なので仕方のないことかと思いつつも、便利な都市に住む私達も一呼吸し、温暖化を抑える炭素同化作用の為の山林の維持、生活用水等の水源涵養の役割も果している人達の暮しも忘れてはならないと思いました。
伺った地域は北陸新幹線の福井から京都・大阪への延伸ルート予定地で、ボーリング調査が入っているとのこと。地下に線路を通すらしいが、排土はどこに持っていくのか、水脈が切れないか等々が心配のようでした。住民10人程の静かな集落に多くのダンプが来て、細い林道はどうなるのか等不安は盡きないようです。東海道新幹線や高速道路等が充実する太平洋側に比べ、整備の遅れている日本海側の人達の立場もあり、どのルートなら通過地域の住民の迷惑が最も少ないかを考え、知事さんや関係市町長さんが協議していると答えるのが背一杯でした。交通アクセスを誘致したい時代に作られた、地元に様々な義務や負担を求める手法は、時代遅れになっているのが現実のようです。
東京・名古屋間45分のリニアーは、新幹線のような公共事業ではなく、民間企業JR東海の企業投資です。東海道新幹線では現在東京・名古屋間は90分です。リニアーでの45分の時間短縮か建設費を充当し運賃の引下げか、皆さんならどちらの価値観を選ばれますか。科学技術の進歩で、時間の短縮、スマホによる意思疎通の便利さと迅速化、自分の思考や感情の表現すらAIに委ねる気楽さが「便利」なのか、人間にとってもって大切な価値、何かを失なっているのではないか等と考えながら、都会の現実への帰路につきました。
ゆっくり流れる時間、人間主役の暮し、美味しい空気の一日でした。